2020 Fiscal Year Research-status Report
光誘起力顕微鏡によるナノスケールでの光ダイナミクスの可視化
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20K15119
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
山西 絢介 分子科学研究所, メゾスコピック計測研究センター, 特別研究員 (00846115)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 光誘起力顕微鏡 / 非線形光学 / パルス光 / 原子間力顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、パルス光を用いて試料の非線形光学応答で誘起される双極子と、探針に生じる双極子間の相互作用を観測することで、試料を光ダイナミクスをナノスケールで可視化することである。非線形の光誘起の力を観測するために、様々な光を導入できる光誘起力顕微鏡の開発を行った。そこで、探針と試料の熱膨張の問題を解決する測定手法であるヘテロダインFM法を実現する変調系および測定系の開発に成功した。また、信号検出系の改良を行った。具体的には、力検出器の変位を測定する光検出器、IV変換器、演算回路などの信号検出系の開発である。その結果、4MHz程度の広い帯域を持ち、従来のノイズの3分の1の測定ノイズを実現した。これによって、より高感度に光ダイナミクスを可視化し、探針と試料の熱膨張の問題をより高精度に取り除くことができる。 これらのため、当初の予定より高い信号検出感度の測定環境を構築するのに時間を要したが、開発した光誘起力顕微鏡を用いて、試料である金ナノ構造体に光を集光し、探針と試料間の双極子間力をイメージングすることに成功した。その後、パルス光によって生じる金ナノ構造体の非線形な分極の観測を試みた。探針を試料に近づけると、CW光を用いた場合とは異なる光誘起力顕微鏡の信号が観測された。これは、パルス光のパルス幅が十分短いために生じた非線形な応答によるものだと予想される。今後は、入射するパルス光のパルス幅を変えて測定していき、その応答の変化を観測することで観測されている現象を描写することに取り組む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画において、当初の予定では光誘起力顕微鏡の開発とそれを用いた双極子間力の観測である。そのため、現在の進展状況は、おおよそ予定通りに進展しているといえる。一方で、パルス光に誘起された光誘起力顕微鏡の信号は検出はできたものの、イメージングするに至らなかった。これは、パルス光を入れた時に力検出器であるカンチレバーの振動が不安定になってしまったためである。これは、当初は予期していなかった応答であり、イメージングを妨げている。今後、パルス光のパルス幅を変えることで解決できるかどうかで進展の状況が今後変わってくると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、開発した光誘起力顕微鏡に導入するパルス光のパルス幅を変えて、観測される信号の様子を見ながらイメージングを行う。またその後、波長の異なる二つのパルス光を用いて、2光子吸収で生じる双極子を遅延時間を変えて測定することで、ナノスケールでの光ダイナミクスの可視化に取り組む。
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