2020 Fiscal Year Research-status Report
ジアセチレン脂肪酸を原料とするディスク状分子集合体の構造制御と機能性膜材料の調製
Project/Area Number |
20K15129
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
田口 翔悟 兵庫県立大学, 工学研究科, 助教 (40844270)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | バイセル / ジアセチレン / 脂肪酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
脂肪酸は溶媒環境によって二分子膜構造を構築することが知られており、機能性膜材料としての応用が期待されているが、その集合構造は不安定であり、構造制御のための基盤技術は確立されていない。一方で、ディスク状の二分子膜集合体「バイセル」は水中での分子の配向と濃縮に適した集合体であるため、バイオミメティクスを利用した機能性膜材料の前駆体として最近注目されている。本研究では色調変化を利用した次世代型センシング材としての用途が期待されているジアセチレン骨格を持った脂肪酸(diacetylene, DA)分子の集合形態制御に挑戦し、DAバイセルを用いた新規な機能性膜材料の調製を目指す。そのため本研究は、①DA分子の分散・集合挙動の観察、②DAバイセルの調製、③Poly-DA (PDA)フィルムの調製、の順に実施し、上記目的を達成するための基礎的知見を集積しており、DA分子として10,12-tricosadiynoic acidから成る集合体を用い、水中でのDA二分子膜集合体の構築条件を検討している。 まず、得られた分子集合体の集合状態を評価する手法として、蛍光プローブLaurdanを用いたパッキング密度解析法を確立した。不飽和脂肪酸をモデル分子として、二分子膜構造に焦点を当てた分子集合状態解析が可能となった。なお、本検討で使用した蛍光分光器は本助成金によって導入された。さらに、本成果は学術誌に掲載された(化学工学論文集, 47, 51-56, 2021)。次に、DA分子集合体の形態は動的光散乱法および透過型電子顕微鏡によって評価した。その結果、DA分子集合体の形態安定性に課題があることが判明した。また、検討③に先駆けて、PDA分子集合体の色調変化評価手法確立のため、色調変化速度から色調変化にかかるエネルギー障壁の評価を行った。その結果サポート分子の導入によるエネルギー障壁の変化が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究を進めていく中で、分子集合体の形態安定性の維持のために当初の想定以上の工夫が必要であることが判明し、実験条件の見直しを行った。これについて、現在はサポート分子の導入を行うことで解決に向かっている。また、新型感染症のまん延に伴う研究活動の制限のため、学外施設の電子顕微鏡による分子集合体の形態の観察が実施しづらくなった。一方で、分光器を本助成金にて導入したことで、分子集合体内の分子間パッキングに関する情報が得られ、また、色調変化に伴うエネルギー障壁の解析も進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
DA分子の分散・集合挙動を観察し、サポート分子の導入による形態安定性の向上を引き続き実施する。また、バイセル調製には二分子膜構造を持つ長鎖分子集合体を界面活性剤と混合する必要があり、現在開催中の選定も行っている。この知見を組み込むことで、DA/サポート分子からなるバイセルの調製を試みる。このバイセルの形態を評価する手法として、偏光板による蛍光偏光解消法を使用する予定であり、偏光板等の準備はすでに整えている。
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Causes of Carryover |
購入した試薬の納品が前年度末に間に合わず、試薬購入用の予算が残ってしまったため。当該試薬の消耗が早いため、今年度での試薬の追加購入のために次年度使用額を使用したいと考えている。
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Research Products
(5 results)