2022 Fiscal Year Annual Research Report
完全無機ペロブスカイトナノ結晶蛍光体の光劣化と自己回復機能の探究
Project/Area Number |
20K15131
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
磯 由樹 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (00769705)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 蛍光体 / ナノ結晶 / 量子ドット / ペロブスカイト / 光劣化 / 自己回復 / 光活性化 / 表面リガンド |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、パーフルオロデカン酸(PFDA)の表面修飾によるCsPbBr3ナノ結晶(NCs)の励起光照射中およびその後の暗所保管中の蛍光特性の変化について評価した。 ホットインジェクション法でオレイン酸が表面リガンドとして吸着した立方晶CsPbBr3 NCs (OA-NCs)を合成し、続けてPFDAのトルエン溶液を加えた。ここで、PFDAの吸着量が異なる試料を作製するために、加えるPFDAの量を変化させた。遠心分離と真空乾燥を経てPFDAが修飾したNCs (PFDA-NCs)の固体試料を回収した。NCsの回収量が少ないことに加えて濃度消光を避けるため、NCsを樹脂に分散したナノコンポジット膜を作製した。エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂を溶解したトルエンにNCs固体試料を加えて超音波照射で分散させ、これをシャーレ内で乾燥して膜試料を得た。大気との接触を避けるため、2枚のガラス基板で膜を挟み検体とした。これに468 nmの青色LEDを72 h光照射し、その後暗所保管した。 OA-NCsのナノコンポジット膜試料に青色光照射すると黒色化し、その後の暗所保管中に元の色に戻った。表面リガンドの光誘起脱離でカラーセンターとなる表面欠陥が生成し、表面リガンドの再吸着が起きたことを示唆する。OA-NCs膜の蛍光強度は光照射中に低下し、暗所保管中に回復が起きた。一方、PFDA-NCs膜では光照射中に一時的な蛍光強度の増大が見られた。この蛍光強度の増大は、加えるPFDA量が多いほど顕著に現れた。励起光照射下の蛍光強度の増大はPFDAの吸着状態の最適化に起因すると考えられ、次第に光誘起脱離が支配的になり消光が起きたと推察される。一方、暗所保管中の自己回復はPFDA量が多いほど見られなくなった。この結果より、脱離したPFDAはNCsに再吸着しにくく自己回復機能を阻害すると考えられる。
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Research Products
(4 results)