2020 Fiscal Year Research-status Report
高速AFMと蛍光顕微鏡の複合機を用いた転写開始素過程の解明
Project/Area Number |
20K15140
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
福田 真悟 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 特任助教 (90829186)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 転写 / 一分子計測 / 転写開始 / RNAポリメラーゼ / 高速AFM |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、高速AFMと蛍光顕微鏡の複合機を用いてRNAポリメラーゼ(RNAP)による転写開始素過程を明らかにすることである。今年度はRNAP/DNA複合体を可視化できる脂質基板の開発を行った。DNAは負に帯電しているので正に帯電している脂質二重膜を用いた。DNAの両端の直線距離を解析した結果、脂質膜上に固定されたDNAはネイティブな構造を維持していることがわかった。また、DNAは脂質膜上を緩やかに拡散し、この動きは観察バッファーの塩濃度によってコントロールできることがわかった。 開発した脂質基板を用いてRNAP/DNA複合体の観察を行った。生理条件下では、RNAPはDNAに結合/解離を繰り返した。この結果は、RNAPがプロモーター領域を探索するときにプロモーター配列へ直接結合する'3D拡散モデル'を支持している。一方で低塩濃度条件では、RNAPはDNA上をスライディング運動した。 RNAPは微弱な静電相互作用によってプロモーター配列を認識・結合し開始前複合体を形成するため、高速AFM観察中に探針走査によって、容易にRNAPがDNAから解離することが分かった。この問題を解決するために、高速AFM観察のための低侵襲走査法の開発を行った。X方向を走査する時のエラー信号を比べた結果、リトレース走査のときにトレース走査のときと比べて大きなフィードバックエラーが観察された。これは、カンチレバー長軸に対するX走査の方向によって試料に大きなトルクがかかるためだと考えられる。この結果から、リトレース走査を省略するオンリートレースイメージング(OTI)法を開発した。OTI法を用いることによって、アクチンフィラメントと微小管をビデオレートで観察することに成功した。さらに、弱い相互作用によって進行するアクチンと微小管の重合過程の観察に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、RNAP/DNA複合体を観察するための基板を開発し、これを用いてRNAPとDNAが相互作用する様子を高速AFM観察することに成功した。これによって、RNAPがどのようにプロモータ領域を探索・認識するのか重要な示唆が得られた。 また、高速AFMのための低侵襲走査法を開発することで、より試料にやさしく高速観察を実行できるようになった。これにより、弱い静電作用によって結合する開始前複合体を可視化できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度開発した脂質基板と低侵襲走査法を用いて、RNAP/DNA複合体が開始前複合体を形成する過程を観察する。また、開始前複合体から伸長複合体への構造変化やabortive initiation時の構造動態の観察を行っていく。 また、高速AFM/蛍光顕微鏡複合機のレーザー波長などの光学系を最適化し、abortive initiation時のRNA断片とRNAP/DNA複合体の高速AFMと蛍光顕微鏡の同時観察を行う。
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Causes of Carryover |
当初、購入を予定していたレンズ等の光学部品を購入しなかったため。また、学会参加費・旅費が不要であったため。
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