2022 Fiscal Year Annual Research Report
高速AFMと蛍光顕微鏡の複合機を用いた転写開始素過程の解明
Project/Area Number |
20K15140
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
福田 真悟 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 特任助教 (90829186)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 転写 / 一分子計測 / 高速AFM / 一分子蛍光顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、DNAが2本鎖から1本鎖にほどかれる過程とRNAP/DNA複合体の構造変化との関連を見出すために、高速AFM/光学顕微鏡複合機にイメージスプリッティング光学系を導入して、複数の蛍光色素を高速AFMと同時に観察できる実験システムを構築した。DNAのプロモーター部位を2つの蛍光色素でラベルして、開始前複合体の形成をFRETを用いて検出することを試みた。しかしながら、FRETの検出効率の低さや高速AFMと光学顕微鏡の視野の大きさの違いから、開始前複合体の形成過程を高速AFMと光学顕微鏡で同時に計測することはできなかった。そこで、粘性抵抗の変化によってシアニン色素の蛍光シグナルが変化することを利用して、開始前複合体の形成過程の一分子蛍光顕微鏡観察を行った。この計測ではDNAが1本鎖へほどかれる様子が蛍光シグナルの増強として観察された。様々なプロモーターを用いて、開始前複合体を形成するまでの時間を計測すると高速AFMを用いて計測したDNAがRNAPに巻き付いている時間と正の相関があることがわかった。 研究期間全体を通して、高速AFMを用いてRNAPはプロモーター領域を’3D拡散モデル’で探索することを明らかにした。また、開始前複合体においてDNAがRNAPに巻き付いて複合体を形成する直接的な証拠を示すことが出来た。さらに、RNAPがクランプ部位を開いてDNAを活性部位に取り込む’クランプオープンモデル’を実証した。さらに一分子蛍光顕微鏡観察の結果と合わせて、DNAのRNAPへの巻き付きが開始前複合体の形成において律速因子であることを明らかにした。計画していた高速AFMと光学顕微鏡の複合機による転写開始過程の観察には至らなかったが、一分子レベルで転写を開始するためのメカニズムを明らかにして、遺伝子発現機構に関する重要な知見を得ることができた。
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