2020 Fiscal Year Research-status Report
高効率薬物スクリーニング系構築のためのアレイ型シリコンチップの開発
Project/Area Number |
20K15148
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
但木 大介 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (30794226)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脂質二分子膜 / hERGチャネル / マイクロアレイ / シリコンチップ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、従来の創薬スクリーニング系が抱える測定スループットの課題を克服するため、人工膜再構成系に基づく高効率薬物スクリーニングアレイの構築を目指すものである。2020年度は、微小孔が複数(16)個配置されたアレイ型シリコンチップの開発に先立ち、微小孔縁部先端形状の高精度な制御技術の確立と、最適化縁部形状を有する微小孔に基づく(単体チップ独立型)マイクロアレイ評価系の構築に取り組んだ。まず前者では、孔形成プロセスにおけるWetエッチング条件の精査により、我々が理想とする縁部形状を再現よく得るとともに、不揮発性有機溶媒を用いずとも(Solvent-freeでも)安定に形成可能な人工膜系の構築に成功した。次に後者では、このSolvent-freeな人工細胞膜をアレイ系へと展開することにより、薬物副作用評価系として機能するか検証した。はじめに、(16ウェル型)テフロン製チャンバーを試作し、これに上述の単体チップ16枚を独立に装着した上で、各ウェルの脂質膜を介して流れる電流の複数同時計測、ならびにイオンチャネル電流の並列記録を試みた。具体的には、Solvent-freeな脂質二分子膜を全16ウェルに亘ってFolding法により一律形成させた上で、心筋活動電位の再分極を担うhERGチャネルを含むプロテオリポソームを各ウェル内へピペッティング法により添加した。その結果、複数のウェルから、シングルチャネル電流を含むhERGチャネル電流を並列に記録することに成功し、さらに、特異的阻害剤であるE-4031の添加によって、観測電流がいずれも完全に抑制されることが分かった。これは、hERGチャネルが本アレイ系における脂質膜へ包埋されたことを示唆するものであり、本マイクロアレイ評価系の高効率スクリーニング法への展開を期待させるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度では、人工膜再構成系に基づく高効率薬物スクリーニングアレイ構築のための基盤技術を確立することができた。具体的には、当初の目標であった「微小孔縁部先端形状の高精度な制御技術の確立」及び「最適化縁部形状を有する微小孔に基づく(単体チップ独立型)マイクロアレイの構築」、いずれの項目も達成することができた。特に、構築したマイクロアレイにおけるSolvent-freeな脂質二分子膜の形成成功確率は8割以上にまで達した。これは微小孔縁部形状の最適化によるものと示唆される。従来、膜の形成に用いていた不揮発性有機溶媒の存在は、水溶液中の薬物濃度の制御を困難にするため、今回Solvent-freeな人工膜系を構築できたことは、薬物副作用評価系としての機能性の観点から特に重要な意味をもつ。しかし一方で、チャネル電流記録に成功したウェルの割合は現状4割弱に止まっていることから、チャネルの包埋効率向上のための対策が別途必要だと考えられる。この点については、2021年度の実施項目と併せて取り組んでいく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度では、当初の計画通り、まず(微小孔が16個配置された)アレイ型チップの開発に取り組む。プロセスの最適化条件を適用し作製されたチップにおいて、全ての微小孔縁部が同様の形状(構造均一性)を有しているか確認を行う。仮に、均一性に問題があった場合には、関係する工程の最適化を改めて実施する。続いて、新規にテフロン製チャンバーを試作し、アレイ型チップを装着した上で、2020年度と同様の評価試験(膜の一律形成、チャネル電流の並列記録、及び薬物副作用反応の検証)を実施することにより、新規マイクロアレイ評価系の構築を行う。また、チャネルの包埋効率向上のための対策の一つとして、我々が先に見出した、チャンバーへの遠心力印加(遠心包埋促進法の適用)についても併せて検討する。最後に、全ての実施項目について総括を行い、アレイ型チップを用いた新規薬物スクリーニング系構築のための現状と課題について考察するとともに、今後の開発指針の策定を行う予定である。
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