2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K15160
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
巻内 崇彦 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任研究員 (70869453)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 低温物理 / スピントロニクス / 磁化ダイナミクス / マイクロ波 / 希釈冷凍機 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、スピントロニクスと磁化ダイナミクスの研究に有用な低温実験技術を開拓することである。2020年度は次の3点で進展した。 1.希釈冷凍機における低周波数微小信号の測定:核スピンと電子スピンが強く結合した反強磁性体である炭酸マンガンを試料とし、希釈冷凍機で実現した極低温において核スピンゼーベック信号を検出した。試料上に作った白金細線に微小電流を流し、核スピンゼーベック効果により白金細線に生じる電圧信号を測定するにあたり、ジュール発熱による温度上昇を許容範囲内に抑えつつ、電圧信号のノイズレベルを下げて測定することを可能とした。また白金のナノリングに対するアハラノフボーム振動を初めて観測し、抵抗の量子振動がスピン軌道相互作用によるシフトを受けることも見出した。 2.低温マイクロ波スペクトロスコピー:1 Kから300 Kの温度範囲で、最大6 Tの静磁場を印加しながら、試料にマイクロ波磁場を印加できる測定系を構築した。実証実験として、炭酸マンガンの核スピン波と電子スピン波の磁場分散をマイクロ波吸収測定によって観測することに成功した。さらに、高マイクロ波パワーにおいて核スピン波の明瞭な非線形吸収を観測した。これは従来考えられていた温度上昇や非調和振動子モデルだけでは説明できない新奇な機構による可能性がある。本測定系は様々な磁性体試料に適用することができる。 3.マイクロ波パルスによる磁化ダイナミクス制御:室温において、フェリ磁性体イットリウム鉄ガーネットの微細構造にパルス化したマイクロ波シーケンスを印加し、磁化ダイナミクスを制御する実験手法を洗練させた。さらに上記の低温マイクロ波スペクトロスコピー系でもマイクロ波パルスを導入する予備実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
核スピン熱電現象の低温実験でネックとなっていた発熱と微小信号検出の問題は、当初の計画どおり確立し、系統測定の段階に入った。さらに、マイクロ波を使った低温実験において、コプレーナ導波路の洗練化によって低温における磁性体のスペクトロスコピーが広範囲の物質で可能であることを見出したことと、マイクロ波パルス実験のノウハウが蓄積されたことにより、当初の計画以上に進展したと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
スピントロニクス現象を探求するための低温マイクロ波測定技術を更に洗練させる。室温で検証したマイクロ波パルスシーケンスを低温に導入することを検討している。希釈冷凍機には、マイクロ波導入側に減衰器、取り出し側に低温半導体マイクロ波アンプ、アイソレータを導入することで低ノイズ測定を実現する。試料の微細化を行い、よりよい熱接触と小さい発熱に向いた素子の作製にも取り組む。このセットアップで、10 mK台の最低温度に冷却した試料の磁化歳差発振による信号を検出する。
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Causes of Carryover |
当初購入を予定していたレジスタンスブリッジは所属研究室のものを借用できる見込みが高くなり、ホモダイン測定に必要なロックインアンプの購入に切り替えたため、差額が生じた。また新型コロナウィルスの流行によって学会がオンライン開催になったため旅費はゼロ円となった。2021年度はマイクロ波部品と低温実験消耗品を購入する予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Presentation] 核スピンゼーベック効果の観測2021
Author(s)
吉川貴史, Reitz D, 伊藤宏陽, 巻内崇彦, 杉本宜陽, 恒川翔, 大門俊介, 大柳洸一, R. Ramos, 高橋三郎, 塩見雄毅, Y. Tserkovnyak, 齊藤英治
Organizer
日本物理学会第76回年次大会