2020 Fiscal Year Research-status Report
非慣性系スピントロニクスの体系的構築に向けたスピン回転結合の直接観測
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20K15162
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久富 隆佑 京都大学, 化学研究所, 助教 (80870435)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 磁気光学 / スピントロニクス / 量子光学 / フォノン / 角運動量 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、本研究遂行に必要な光学系の立ち上げとサンプル作製手法の確立を行った。 本研究ではスピン回転結合の結合強度を実験的に導出することを目指している。具体的には、(1)SAWの振幅と(2)伝導電子スピン蓄積量の双方を光学測定を用いて取得し、それらを比較することにより結合強度を導出する。そこでその両者の計測が可能となるような独自の光学系を設計した。具体的にはプローブ光を入射角45度でサンプル表面に導入し、SAW局在位置に集光する。反射光の経路(波数ベクトルの向き)は、SAWの存在に伴い発生するサンプル表面の傾きにより、SAW周波数で変調される。この反射光の経路変調を利用することによりSAWの空間的なイメージングやSAWの振幅を割り出すことが可能となる。また、サンプル表面の面内方向にスピン偏極した伝導電子スピン蓄積は、縦Kerr効果により反射光の偏光を回転させる。この反射光の偏光変調を観測することにより、スピン蓄積量を割り出すことが可能となる。 測定に向けて、SAW共振器の作製も行った。SAW共振器は、SAWデバイスで広く利用されているリチウムナイオベート基板上に金属薄膜を蒸着し、フォトリソグラフィーによりSAW励起用アンテナやブラッグミラーを作りこむことにより作製した。電気測定の結果、SAW共振器の室温における内部Q値が4000であり、本研究の使用用途においては十分な性能がでていることを確認している。 作製したサンプルならびに立ち上げた光学系を用いて、SAW共振器の空間イメージングを既に行っており、SAW共振器特有の信号を得ることに成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り本研究遂行に必須である「光学系の立ち上げ」ならびに「サンプル作製手法の確立」が無事完了し、既にSAW共振器の空間イメージングが可能となっているから。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度では、SAW局在部分に金属薄膜を成膜し、スピン回転結合により発生するスピン蓄積由来の信号取得を目指す。非磁性金属や軟磁性金属などを用いて比較研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
理由:新型コロナウイルスパンデミックの影響により、予定していた学会参加が中止となり、旅費および学会参加費の支出が想定よりも少なく済んだため。使用計画:本年度の旅費および学会参加費として使用する。
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