2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of two-dimensional NbO2 superconducting layer realized by epitaxial thin film
Project/Area Number |
20K15169
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
相馬 拓人 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (50868271)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 超伝導 / 強相関電子系 / 電気化学 / リチウムイオン電池 / 二次元物質 / 酸化物エレクトロニクス / エピタキシャル薄膜 / 超伝導ドーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,二次元NbO2超伝導層の全貌を明らかにする研究である。初年度である昨年度には,その舞台となる二次元NbO2層を持つLi1-xNbO2の薄膜合成法を確立し,電子構造と二次元超伝導の観測に成功した。その結果,本研究の第一の目標である"NbO2超伝導層が理想的である"ことが証明され,本年度にPhysical Review B誌に原著論文が掲載された。 また本年度は,第二の目標である"NbO2超伝導層の全貌を解明する"ことに尽力した。その結果,以下の成果が得られた。 ①[Li1-xNbO2電気化学デバイスの作製] 合成に成功したLi1-xNbO2エピタキシャル薄膜を電極としたLiイオン電気化学デバイスを作製した。そのデバイスに対して電圧を印加するとLiイオン電池の充電/放電反応が起こり,薄膜に含まれるLi量が連続的かつ可逆的に変調できることが明らかとなった。その結果,Li量xが様々かつ精密に調整されたLi1-xNbO2が同一試料で実現し,NbO2層の物性を詳細に調べられるようになった。 ②[NbO2層における電子相の解明] Li1-xNbO2の物性のLi量依存性を調べると,本物質はバンド絶縁体からフェルミ液体金属を経由し,最終的に非フェルミ液体状態へと転移し超伝導ドームを生じることが明らかとなった。これは二次元NbO2三角格子にホールキャリアが導入されていくにつれて電子相関が増していき,その結果として超伝導ドームが生まれるという銅酸化物高温超伝導体の電子相図と対応する結果である。更に,近藤効果の発現など二次元NbO2三角格子に特有な現象も観測された。これらの結果は本研究の第二の目標である"NbO2超伝導層の全貌を解明できた"ことを表している。 これらの結果は原著論文としてまとまりつつあり,次年度に投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は [A] NbO2超伝導層を証明すること [B]NbO2超伝導層を解明すること の2つであるが,その両者の実験の大部分が本年度で理想的に達成された。そのため,翌年度は結果の考察と研究の総括を中心に行う予定である。更に,本研究により明らかになった本物質の顕著な特徴は,圧力効果や光学特性に関する新たな共同研究にも繋がり,研究計画当初では予想できなかった更なる展開まで見込まれている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる来年度は,これまでに得られた結果を総括し本研究を完遂する。具体的には,Li1-xNbO2の完全な電子相図を完成させ,その結果をもとにNbO2超伝導層で起こった現象の考察を行う。特に,銅酸化物やその他の二次元超伝導層との比較や理論的な考察からその本質を明らかにする。そして,NbO2面における新しい物理現象や今後に繋がる新しい二次元超伝導層の実現指針までを提案する。
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Causes of Carryover |
他の助成金の獲得に成功し,共通で使用する備品・消耗品類の殆どを他の資金で賄うことができたため次年度使用額が生じた。そのため,次年度では次のステップで必要な物品の購入に充てる事ができ,研究が加速かつ深化できる見込みである。
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