2023 Fiscal Year Annual Research Report
Understanding and control of structure and electronic state of thin film of highly ordered organic semiconductor molecule via photoelectron-imaging
Project/Area Number |
20K15176
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
長谷川 友里 立命館大学, 理工学部, 助教 (60829464)
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Project Period (FY) |
2022-12-19 – 2024-03-31
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Keywords | 光電子分光 / 有機半導体薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機半導体薄膜の電子・光物性の制御には,分子薄膜の構造と電子状態との相関を理解することが重要となる.有機分子薄膜の構造は電子状態に影響を及ぼすことが知られているが,分子とその周辺の分子や基板との相互作用によって容易に変化する.近年,有機半導体分子薄膜の角度分解光電子分光計測において,エネルギーと運動量(E-k)を計測し,分子軌道のエネルギーおよび空間分布の双方の情報が得られることが示されてきた.本研究では,分子薄膜の構造制御とE-kマップに着目した計測により,分子薄膜中の電子状態を明らかにすることを目的とする. 本研究課題の前半では,有機半導体分子膜のE-kデータの取得と新規計測手法の開拓に努めた.2020年に分子科学研究所UVSORに導入された軟X線光電子運動量顕微鏡において,有機分子薄膜の成膜や計測条件を調整し,Au(111)表面に作製したcoronene分子膜の価電子帯のE-kデータおよび共鳴光電子分光スペクトルが取得できる可能性を示した(論文1報).一方,低エネルギー角度分解光電子分光を用いたgraphite表面上のpentacene単層膜の電子状態計測では,分子-基板間の弱い相互作用が伝導帯の電子状態に及ぼす影響に着目してE-kマップの解析を進め成果を報告した(国際学会2件,国内1件).現在,論文投稿の準備を進めている.後半では,E-kマップの計測に適した高配向分子膜の探索を進めた.異方的な微斜面Au基板や,酸化物TiO2(110)基板に着目した.走査トンネル顕微鏡を用いた薄膜成長過程の分子レベルの構造計測から,分子膜の多ドメイン化が抑制されることが分かった.特に,微斜面Au基板ではステップの影響により等方的なAu(111)表面とは異なる成長が見らた.双方の基板において,分子配向が光電子強度の角度分布に反映されていることを示唆する結果を得た.これらの詳細なE-kマップの取得およびそれらの解析が今後の課題となった.
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