2020 Fiscal Year Research-status Report
量子ドット太陽電池のキャリア収集効率改善に向けた3次元障壁層の開発
Project/Area Number |
20K15183
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
庄司 靖 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究員 (20827357)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 量子ドット / 中間バンド型太陽電池 / 量子ナノ構造 / 結晶成長 / 分子線エピタキシー |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の太陽電池は吸収できずに透過している未利用光が多く存在しており、本研究ではその未利用光に対して、量子ドットなどのナノ構造を使って2段階式の光吸収を発現させ、太陽電池の変換効率を向上させることを目的としている。当該方式では量子ドットなどのナノ構造で光生成されたキャリアを再び光によって取り出すことにより、原理上は元の単接合太陽電池の出力電圧をほぼ維持した状態で、電流値の増大を図ることができる。しかしながら実際に作製されたデバイスでは、光吸収によって生成されたキャリアが太陽電池構造内を伝導する際に、量子ナノ構造に捕獲されており、その電流損失によって変換効率が低い値に留まっている。本研究ではこのキャリアの捕獲を抑制する構造を検討し、量子ナノ構造太陽電池における再結合損失の抑制および変換効率の改善を目指す。本年度はInGaAsおよびGaSb量子ドットに対して3次元障壁層の結晶成長に取り組んだ。分子線エピタキシー法で量子ドットを成長したのち、AsおよびSbフラックスを所定の流量に制御したのち、格子歪みを利用してAlAsSbを結晶成長させることで量子ドットの周辺にAlAsSbの3次元構造を形成させることに成功した。 また、並行してGaSb量子ドットに対してAlGaAsを障壁層としたときのキャリア取集に関して分析した。AlGaAsはGaAs基板との格子定数差が小さいため、3次元成長にはならないが、AlAsSbと同様にGaAsよりもバンドギャップの大きい材料であるため、量子ドットの障壁層として導入した際の振る舞いは有益な知見となる。AlGaAsを障壁層とした試料ではGaAsを障壁層とする試料よりも2段階式に光生成されたキャリアの収集量が高温でも高く得られることが実証された。これはバンドギャップの大きい障壁層が導入されたことで量子ドット内に生成されたキャリアの熱脱出が抑制されたためと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子線エピタキシー法で量子ドットの周囲にAlAsSbの結晶を3次元成長させる条件を確立している。また、ワイドギャップ材料を中間バンド型量子ドット太陽電池の障壁層に導入した際の効果についても検証できており、次年度の実施内容に向けた準備が整っている。以上のことから、おおむね順調に進んでいると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の計画どおり、太陽電池応用に向けて、量子ドットをAlAsSb結晶で埋め込んだ構造の積層成長を検討する。積層成長の場合は、残留歪みの蓄積により転移等が生じ、結晶品質が大きく劣化する可能性があるため、量子ドットの堆積量や埋め込み材料の膜厚制御を行うことで最適化を図る。
|
Causes of Carryover |
コロナの影響により、実験の実施日が少なくなったため、当初の予定よりも消耗品の利用額が少なくなった。同様に学会発表等に伴う国内外の出張ができない状況であったため、旅費の利用もなかった。 上記理由によって生じた次年度使用額に関しては消耗品費および分析費用にあてる予定である。
|