2020 Fiscal Year Research-status Report
不可逆過程計測のための高感度シングルショットテラヘルツ時間波形計測
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20K15188
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷 峻太郎 東京大学, 物性研究所, 助教 (80711572)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | テラヘルツ / 時間領域分光 / シングルショット |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題はテラヘルツ時間領域分光を精密かつシングルショットで行う手法を開発することを目的とする。テラヘルツ時間領域分光はテラヘルツ帯域における電場を直接観測する手法であるが、不可逆現象の観測のためシングルショット測定を行うためにはシグナルノイズ比の低さが問題となっている。とりわけ1-4 THzを超える広帯域のテラヘルツ時間波形の計測を行うためには非線形結晶による電気光学効果を用いた偏光回転の大きさの検出が強力な手法である一方、時間分解能・光検出器の兼ね合いからシングルショットによる高感度検出には困難が伴う。本研究課題ではテラヘルツ検出の高感度化を実現するため新規な検出系および光源の開発を行っている。令和2年度はプローブ用狭帯域短パルス光源の開発を行った。パルス駆動されたQ-switch型のレーザーダイオードをシード光として、ファイバー光増幅器と固体増幅器を用いてレーザー光の増幅を行った。当初の計画どおり繰り返し1 kHz、バースト繰り返し100 MHzをシードとする高出力プローブ光の発生を試みたが自然放射増幅光の影響が支配的となってしまった。このため当初の計画を変更し、パルス分割と増幅を2段階に分けることで自然放射増幅光の低減を行った。また長時間安定動作に課題があったことから光ファイバーの設置・固定方法の改良を行うとともに固体アンプの小型化にむけた開発を行い、シングルショット分光を実現するための光源の長時間安定動作を実現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍の影響で基盤となるシード用光源の調達が当初の予定に比べ大幅に時間がかかるとともに、想定していたよりも弱い出力のため当初計画していた増幅手法では自然放出増幅光が支配的となってしまう問題が生じたものの、最終的には本年度の開発範囲であるプローブ用光源の開発まで終了しており、概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度に予定していたテラヘルツキャビティの構築を行い、令和2年度に開発した光源と組み合わせることで、高感度検出に関する性能評価を行う。
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Causes of Carryover |
光源の安定化を実現するために堅牢な光学系を構築すること想定していたが、光源の小型化・モノリシック化に伴い当初予定していたオプトメカニクスの購入が必要でなくなったため。結果として、モノリシックな構造が安定性に大きく寄与することがわかったため、令和3年度に構築するテラヘルツ検出光学系についてもモノリシック化を実現するために繰越された助成金を使用する。テラヘルツ光学系については小型化が困難であることから、材料費・製作費が高額になることが見込まれる。
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