2021 Fiscal Year Research-status Report
不可逆過程計測のための高感度シングルショットテラヘルツ時間波形計測
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20K15188
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷 峻太郎 東京大学, 物性研究所, 助教 (80711572)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | シングルショット / レーザーアブレーション / 深層学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
レーザー加工現象は関与する物理過程の多階層性と非線形性を反映して、不可逆かつカオス的に振る舞うため、シングルショット観測を通した現象の理解が重要である。とくに強い超短パルスレーザーを物質に照射すると、瞬間的な電子励起により系全体への熱緩和が起こるまえに物質が除去されるレーザーアブレーションと呼ばれる現象が起こるが、表面形状由来する吸収やエネルギー散逸の非線形性を反映して、多パルス照射下におけるシングルショット過程の理解はなされていなかった。本年度はレーザーアブレーションの際に飛散する粒子数の表面形状依存性を明らかにするため、レーザーパルス照射前後の加工痕の詳細測定を行い、シングルショットのレーザー照射が引き起こす表面形状変化の定量化に成功した。具体的には、レーザーアブレーションに伴う表面形状変化とレーザー照射直前の3次元形状データを大量に収集し、深層ニューラルネットワークを用いて表面形状変化の差分方程式を構築し、この差分方程式化が実際の加工現象を定量的に再現することを様々な材料やパルスエネルギー、照射パターンに対して確認した。本成果は、大規模な事前・事後のデータの組を実験的に測定し深層ニューラルネットワークを用いて定量化することで、カオス的に振る舞う不可逆現象を差分方程式化し、予言性を持たせることができることを示したものであり、レーザー微細加工のシミュレーターの構築などの産業応用にも資する成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目標であるシングルショットのレーザーアブレーション時に発生するテラヘルツ電磁波の検出を行う上で、そもそもシングルショットによるレーザーアブレーションがどのように起こるのかの知見は欠かすことができない。一方、実際の実験において発生する多パルス照射の状況においては、シングルショットの放出粒子数さえ明らかになっておらず、平均値を用いた議論がなされるのみであった。本年度の成果により事前・事後の実験データを大規模に測定し深層学習を用いることで、様々な材料に対して多パルス照射下であっても実験を再現する差分方程式の構築に成功した。本結果に基づき、レーザー照射毎の粒子数放出数のばらつきのみならず、表面形状の変化の定量化まで成功したことは当初期待していた以上の進捗である。実際の放出される粒子数の定量化が可能となったことで、測定されるテラヘルツ電磁波のシングルショットでのばらつきに関する妥当性の評価が可能となる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果によりシングルショットの不可逆現象を、始状態と終状態の組みとなるデータを大量に収集し深層ニューラルネットワークにかけることで定量化可能であることが明らかになった。このような不可逆現象の差分化は様々な展開が期待されるため、より広いレーザーパラメーター領域において同様の測定を行い、シングルショットによるレーザーアブレーション現象の解明に取り組む。加えて観測されている電磁波放出のモデル化として二つの荷電粒子駆動機構が重要であることに関する知見が得られており、今後理論家を交えた議論をおこなったいく。
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Causes of Carryover |
当初調達を予定していた光学装置の会社が買収に伴い一般販売を停止したことから、類似製品をカスタム製造してもらうべく国内メーカーと交渉しており、本年度調達予定である。
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Research Products
(4 results)