2022 Fiscal Year Annual Research Report
不可逆過程計測のための高感度シングルショットテラヘルツ時間波形計測
Project/Area Number |
20K15188
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷 峻太郎 東京大学, 物性研究所, 助教 (80711572)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | レーザーアブレーション / テラヘルツ / 不可逆変化 / シングルショット / 深層学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は超短パルスレーザーによる物質破壊メカニズムをテラヘルツ放射を通して明らかにすることを目的とする。このような破壊過程はフェムト秒レーザーアブレーションと呼ばれ、強い光によってなぜ物質が壊れるのかという興味のもと1990年代から活発に研究が行われてきたが、超短パルスレーザーにより瞬間的に引き起こされる電子励起過程の複雑さおよび結果として生じる高温高圧状態の測定の困難さから、そのメカニズムは明らかになっていなかった。加えて不可逆な破壊過程であるレーザーアブレーションは、パルス照射毎に表面形状などの物質の初期状態が変わるため繰り返し測定に基盤を置く手法では、実際に起きている現象を明らかにすることは困難であった。 本研究課題では、レーザーアブレーションに伴って発生するテラヘルツ放射に着目し、その時間波形からダイナミクスを明らかにすることを試みた。結果として金属のレーザーアブレーションでは従来無視されていたクーロン力が重要な影響を及ぼすことを明らかにした。加えてパルス毎の形状変化を精密に測定することにより、アブレーション過程において形状変化が果たす役割を定量的に評価することに成功した。 本研究課題では実験的に測定されたテラヘルツ電場波形から波動光学を用いて逆算した過渡電流と、古典近似の下解析的に導出した多光子イオン下での電荷分布を比較することにより、鏡像電荷による光電子の引き戻しが重要な役割を果たしていること、およびパルス照射下で発生する光電子がイオンを引き出すのに十分なだけあることを明らかにした。またパルス毎に生じる表面形状変化を深層ニューラルネットワークを用いた差分方程式で記述することにより、定量評価することに成功した。さらに形状変化において重要となることが期待される残留表面エネルギーについて、パルス毎の表面積変化からランジュバン方程式を用いて記述することに成功した。
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