2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K15189
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
岩國 加奈 電気通信大学, レーザー新世代研究センター, 助教 (80837047)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 光コム / フーリエ分光計 |
Outline of Annual Research Achievements |
光コ ムは時間領域では繰り返し周期が一定な超短パルスレーザーの出力で、周波数領域ではレーザー共振器長で決まる繰り返し周波数frepが一定のコム状スペクトルになっている。 frepが非常に正確に一定であることから、光コム は「周波数のものさし」として計測分野に利用され、近年は分子分光実験への応用が盛んに研究されている。 光コムを分光の光源として用いると、連続発振(CW)レーザー分光で得られる高い分解能や周波数精度を、白色光源で観察されるような広いスペクトル帯域にわたって、しかも100 μsから数msの短い測定時間で実現できる。このような光コムの強みを利用するには、100 MHz程度間隔で広がるコムの各モードを分離する必要があり、これを実現する分光手法として、高分散素子を使った分光法や、フーリエ分光法と、その一種であるデュアルコム分光法がある。 光コムを光源とする分光実験の大半は、高性能なコム光源が入手しやすい近赤外領域で行われている。しかし、分子分光には分子の指紋吸収線が多数存在する中赤外領域が適しており、光コム分光計の中赤外領域への拡張が期待されている。高分散素子のような特殊な光学素子や高価な赤外カメラが必要ないことから、中赤外領域での分光法はフーリエ分光法が有力視されているが、デュアルコム分光の場合、2台の光コムスペクトルが重なっていることや、精密な周波数制御が必要となる。そこで本研究では、 光コムの時間領域での出力が繰り返し周期一定のパルス列であることに着目し、1台の光コムで近赤外デュアルコム分光と同等な周波数分解能と広帯域特性を有する新奇フーリエ分光手法を提案し、その性能を評価することを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目は中赤外光コムの種光となる近赤外領域で発振する光コムを開発した。これは開発する新規分光手法の光源となる。開発した光コムは、偏波保持ファイバーでレーザー共振器が構成され、温度や風などの実験環境の変動に対しスペクトル変化が少ない堅牢なシステムとなっている。また、共振器の一部を空間に出し、ピコモーター付きの移動ステージに載せることで、モード同期を維持しながら繰り返し周波数を大きく変化でき、新規分光計の光源として十分な性能を持っていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は主にフーリエ分光を行うためのマイケルソン干渉計を構築する。周波数が既知の連続発振(CW)レーザーをガイド光に用いて光学系を構築し、インターフェログラムとスペクトルが正しく得られることを確認する。また、インターフェログラムの取得とその高速フーリエ変換をFPGAを用いて行うためのプログラムを開発することを目指す。3年目以降は1年目で開発した光コムを光源に置き換え、新規分光計の原理検証を行う予定である。
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