2020 Fiscal Year Research-status Report
First-principles study of light-matter interactions on semiconducting metasurfaces
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20K15194
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
植本 光治 神戸大学, 工学研究科, 助教 (90748500)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 第一原理計算 / TDDFT / メタ表面 / 非線形光学 / 超高速現象 / 大規模計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、Maxwell方程式に関する電磁界シミュレーションと電子系の時間依存密度汎関数法(TDDFT)を結合させた解析手法によって、ナノ物質と強レーザー場の相互作用の理論予測を試みる。前年度は下記の点に注力した。 (1)筑波大学を中心に開発されている光科学向けシミュレーションコードSALMONのバージョン 2.0.0世代のリリースに向け、申請者は同コード内のMaxwell+TDDFTマルチスケールシミュレーションの実装と機能拡張を行った。(プログラムは2020年7月にウェブ上で公開された。) (2)グラファイト/グラフェンなど炭素の2次元物質は、特異な電子状態により巨大な非線形性を見せる。本研究では、炭素のナノ薄膜中の強いレーザー光との相互作用による光伝播への影響を、Maxwell+TDDFTマルチスケール計算法により調査した。特徴的な超高速の可飽和吸収が10フェムト秒以下の時間スケールかつ広い電場強度領域で出現することを確認した。これにより薄膜中で生じる光伝搬は、線形応答モデルの場合に比べ遥かに深く侵入することが明らかになった。ナノ薄膜における可飽和吸収の第一原理的な理論予測は初の試みである。同成果は2021年2月にPhysical Review B誌に掲載された。 (3)SALMON 2.0.xの基底状態計算をもとにした半導体ブロッホ方程式ソルバー「SSBE2」を開発し、SALMONコードのTDDFTによる結果との比較を行った、線形・非線形成分ともに、おおむね定性的によく一致する結果が得られることが確認される。ただし、ノルム保存型擬ポテンシャルの非局所電流密度成分が考慮されていないことによる誤差が想定以上に大きく、計算精度には改善の余地があることが明らかになった。申請者は実証用のコードをGitHub上で公開している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は当初の研究計画書で予定していた、Maxwell+TDDFT multiscale法のプログラム実装、およびSALMONコードと連携可能な半導体ブロッホ方程式ソルバーの準備を行われた。また、同プログラムコードを応用した炭素ナノ薄膜の非線形光学特性の研究成果が得られた。3次元大規模ナノ構造にむけた計算コードの調整作業、ブロッホ方程式ソルバーの計算精度の改善が必要であり、今年度継続して課題に取り組む。
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Strategy for Future Research Activity |
概要(1)の成果で得られたコードを、ナノ薄膜(半導体・二次元物質)にたいして適用してきたが、2021年度中にはメタ表面系への適用できるよう調整を行う。また、メタ表面解析の前段階として半導体ナノ薄膜による非線形光学応答(高次高調波発生)の入射角度依存性を調査するためのプログラム実装を行っており、同成果について今年度上半期中に論文投稿をめざす。さらに、ナノ薄膜中のフェムト秒レーザーパルス伝搬にあらわれる非線形光学効果について、国外の実験グループ(ドイツ・マックスプランク量子光学研究所)との共同研究が立ち上がりつつあり、本計算コードもちいた実験データ解析をこころみる。 概要(2)における炭素のナノ薄膜の第一原理予測が成功したことから、申請者は類似する光学特性の存在が実験的に報告されている遷移金属ダイカルコゲナイド系二次元物質について同様の解析をこころみており、そちらについても今年度の解析対象に含める。 概要(3)におけるブロッホ方程式計算では、非局所電流密度による問題点を改善するためのフォーマリズムの改良をこころみる。また、非局所電流密度による困難が原理的に生じない、FLAPW法にもとづく全電子計算コード「ELK」の計算結果を使用するプログラムを開発中であり、これによる精度の評価をおこなう。 2020年度は本プロジェクトに関連する学会発表回数が不足気味である。次年度は遠隔開催の学会発表を増やし研究成果の周知をすすめる。
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Causes of Carryover |
前年度は国内・国際学会のほとんどが中止または遠隔開催になったため出張費が不要となった。同時期に応募していた池谷科学技術振興財団の単年度助成計画が採択され、同様の理由から同予算のほぼ全額を計算機等の機材購入にあてることができた。また、筑波大学の学際共同利用プロジェクトに申請者の計画が採択されたため、スーパーコンピューターの使用時間がほぼまかなえたことによる。2020年度においては、研究計画の実施に必要な計算資源が充足した状態にあった。 2021年度は、本助成金をもちいて研究用の計算機の増設(ラックマウント型1-2ノード)、およびスパコンの計算時間購入をおこなう。また、今年度下半期の状況次第では、国外発表や共同研究者との打ち合わせのための出張費にもちいる予定である。
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Research Products
(2 results)