2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K15196
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
田村 守 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (30793583)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 光マニピュレーション / 光圧 / 光発熱 / シミュレーション / 数値流体力学 / 電磁場解析 / レーザー加工 / 光渦 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は「光圧と光発熱による流体制御の理論的枠組の構築と、応用に向けた指導原理の獲得」 である。本研究では(A)(B)の2通りの構想・理論の枠組みに関する項目があり、光によって流体を(A)間接的、もしくは(B)直接的に制御する方法を理論的に探索する方針に分かれる。また構想(A)(B)両者の研究項目として、①数値解析手法の構築、②流体制御の基礎的性質の解明、③応用に向けた探索を挙げている。 初年度である2020年度は、構想(A)の準備をしつつ、特に構想(B)の光による流体の直接制御に関して、項目①~③に取り組んだ。オープンソースの数値流体力学のライブラリを基盤として、電磁場シミュレーションの手法と数値流体力学を融合することで、光圧によって駆動される液相の形状変化を追跡するための手法「Fluid Optical Control Simulation (FOCS)」の基礎部分の構築に成功した。本手法の適用例として、光照射によって流動性を生じる光異性化材料を想定したシミュレーションを行い、先行研究の実験結果に整合する光誘起の表面構造の形成を再現した。また、高出力レーザー照射により生じる溶融金属の変形機構に対してもFOCSの適用可能性を議論するために、光発熱による熱伝導や相変化などを扱えるレーザー加工の分野のシミュレーション手法も活用して開発を進めた。特に、対象とする形に適合するために手法に改造を施し、本研究の重要課題である光発熱による流体制御に関連し、光渦による特異な構造形成の機構の一端を明らかにしてきた(一連の成果を論文投稿準備中)。これらの成果を踏まえたFOCSの発展により、上述の機構の全貌解明が可能と考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように、構想(B)において、項目①~③の全てに大きな進展があった。まず、数値計算手法FOCSの基礎の構築に成功した。課題申請時点では仮想的なパラメータに基づいた初歩的な計算結果のみを得ていたが、光異性化材料を具体的な対象として現実的なパラメータを想定した解析を行うため、数値流体力学と電磁場解析のモデル構築の方法を改善することで、先行研究の実験に整合する結果を得ることができた。更に、FOCSの溶融金属への適用に際して、レーザー加工のシミュレーション手法を援用することで新手法開発への道が拓けたことも想定外の大きな進展である。光照射による加熱で生じる相変化を含めたシミュレーションは容易でないため本項目の実施は当初予定していなかった。しかし、上述のライブラリに含まれるソルバーを採用し、更に本研究の目的に合わせて独自の改造を施すことで、光渦とマランゴニ効果の下での、特殊な構造形成過程の解明に繋がる成果を獲得し、本研究の大きな進展に繋がった。 また2年目である2021年度からは、構想(A)を解決するためシミュレーション法の基礎部分も形になりつつある。具体的には、数値流体力学のライブラリ上で、ナノ粒子の光操作のシミュレーションを実施することに成功しており、今後、目的とする研究を円滑に実施可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目である2021年度より、初年度の研究実績を踏まえて課題(A)の光による流体の間接操作の理論研究も推進する予定である。現在、そのための準備として、上述の数値流体力学のライブラリ上で、ナノ粒子の光操作のシミュレーションに成功している。 現在までに構想(B)の光による流体の直接制御において大きな進展が得られている。今後、光異性化材料を対象とする系において、実験結果を再現するだけでなく、理論解析による新奇構造形成の新原理を探索し、得られた研究成果の論文出版を目指す。また、得られる新原理の応用に関して、光発熱と光圧の両方の効果を考慮したシミュレーションを実施することで、一例としてレーザー加工における角運動量の寄与を解明し、光渦による特殊な構造形成の機構の全貌を解明する。 一方で、構想(A)の間接制御については今年度より精力的に研究を推進する予定である。前述の通り、数値流体力学のライブラリ上でナノ粒子の光操作のシミュレーションに成功しており、今後、粒子と流体を連成して評価することで新規な数値解析手法の構築を目指す。また、実験での先行研究などを参考に構築した手法の妥当性を議論しつつ、更にマイクロ流路やマイクロ液滴などにおける粒子の光操作を通じた流体間接操作の新原理解明を目指す。さらに、構想(B)との融合も図り、流体直接操作を通じた新奇な間接的粒子操作の可能性などを探索する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、国内外の学会の中止が相次ぎ、また開催された場合でもオンラインでの参加となったため、出張費や参加費の支出が想定よりも大幅に少なくなったことが大きな要因である。今年度も同様の状況が継続すると考えられるため、旅費の代わりに物品費として計算リソースの拡充に割り当て、研究の実施効率の向上を検討する。
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