2021 Fiscal Year Research-status Report
ミクロな物質科学に基づく山岳湖底環境中の放射性セシウム担持体の全容解明
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20K15215
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| Research Institution | Hokkaido University |
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Principal Investigator |
菊池 亮佑 北海道大学, 工学研究院, 助教 (50832854)
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2020-04-01 – 2023-03-31
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| Keywords | セシウム / 粘土鉱物 / 山岳湖 / 堆積物 / 放射能 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
福島での原子力発電所事故後の地表での放射性核種の移行挙動を理解するためには、放射性セシウム（Cs）の存在形態の多様性や周辺地質を反映した地域依存性についての検証が必要となる。本研究は、山岳湖という周辺母岩が明確な系に焦点を当て、湖底堆積物中の放射性微粒子の特性について、ナノ・マイクロ分析技術を駆使して明らかにする。さらに、堆積物とその中に含まれる放射性微粒子の両方を定量的に評価することで、放射性Csの担持体の地域依存性や堆積物の性質に則した処分方法の検討、生態系との相互作用の解明を目指す。
R3年度には研究計画のうち、（１）湖底堆積物の粘土鉱物の鉱物学的評価、（２）周辺の土壌試料中の粘土鉱物の鉱物学的評価、（３）放射性微粒子の単離・解析の一部を実施した。
（１）湖底堆積物の構成鉱物には結晶性鉱物としてクリストバル石や石英、長石が主体で粘土鉱物の寄与は少ないが、一部の試料で少量のスメクタイト・イライトの存在が確認されたほか、全ての試料でAlやSiに富む非晶質物質の存在が示唆された。
（２）未風化の輝石安山岩も含め、群馬県赤城山周辺の土壌試料を複数採取・分析を行った。少量のスメクタイト・イライトが観察されるが、これらは母岩中の雲母鉱物に由来するというよりは、土壌中で自生した、あるいは風成塵起源と考えられる。また、AlやSiに富む非晶質物質の寄与が大きいことも特徴であることが分かった。
（３）天然の土壌試料から直径数～20μm程度の大きさの放射性微粒子を単離するために、オートラジオグラフィとマイクロマニピュレータによる単離とFIB-SEM, TEMを用いた微細構造観察から、イライトなどの結晶性粘土鉱物に加えて、アロフェン・イモゴライト様の非晶質物質が担持体となっていると考えられる。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は学内施設の利用制限に伴い、湖底堆積物の供与・受入れに遅れが生じたため当初の計画から遅れた部分があったが、2021年度については概ね順調に進んだ。また、土壌試料の採取・分析についても、2020年度中に実施出来なかった分と併せて、概ね順調に実施できた。FIB-SEM, TEMによる微粒子解析は、装置故障で中断する時期があったものの、学内の別装置の利用で対応した。
一方で、福島県内の複数の土壌試料中に含まれる放射性微粒子の解析結果をまとめた論文については、2021年度中の投稿予定であったが、追加試料の解析を加えて、2022年度前半の投稿を予定している。
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| Strategy for Future Research Activity |
R4年度は申請書記載の2年目・3年目の計画を一部修正して、以下2点を実施する。
（１）放射性微粒子の単離・解析が完了していない一部の土壌試料について、イメージングプレートによるオートラジオグラフィおよびマイクロマニピュレータによる単離を継続する。加えて、FIB-SEM,TEMによる微細構造の観察を継続実施する。
（２）（１）のデータを加えて、2021年度に単離・解析した放射性微粒子の特徴を整理し、福島県東部の花崗岩土壌やチェルノブイリ地域等での既存研究と比較することで、周辺の地質と放射性Csの担体・存在割合の関係を検証する。
（３）適宜、加熱処理および溶出処理による評価も合わせて、堆積物の鉱物組成および放射性微粒子の特性に合わせた処理方法を提案する
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