2020 Fiscal Year Research-status Report
日本海東縁のガスチムニー構造を介したヨウ素の濃集評価
Project/Area Number |
20K15216
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
尾張 聡子 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (50846350)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 日本海 / ガスチムニー / 海洋堆積物 / 間隙水 / ヨウ素フラックス / メタン |
Outline of Annual Research Achievements |
ヨウ素は人類に永続的に必須な資源であり,世界的に需要が高まっているが,その供給は日本とチリで約90%が賄われている.このヨウ素鉱床が枯渇した場合,人類はヨウ素をどのような場所から生産・利用することができるか明らかにするため,本研究は日本海東縁の海底下に分布する,流体を表層に効率的に運搬する地質構造であるガスチムニー構造を対象に,本学の練習船を用いて堆積物を採取し,間隙水溶存成分の化学分析からヨウ素の濃集率や,将来的に日本海のガスチムニーがヨウ素鉱床としてどれ程の規模で発達するか明らかにすることを目的としている.さらに本研究は東京海洋大学の学生が乗船する練習船航海を利用した採泥を計画しており,海洋の開発・研究の次世代を担う本学の学生達に対し,海洋調査の技術継承を行うことや,次世代のヨウ素鉱床の評価をする本研究が,海洋資源の持続的な利用や,資源鉱床学,環境動態学的な視点からの教育に貢献することも目的としている.そのため,乗船中に,ピストン式採泥器の組み立て・試料採取の技術のレクチャーに加え,本研究の背景や目的をはじめ,ガスチムニー構造やガスチムニー構造内に発達するガスハイドレートなどのヨウ素との関連性の説明や,それらの資源鉱床としての位置づけを授業形式で学生へレクチャーする予定であった.しかしながら,本年度はコロナウィルス蔓延のため,航海が中止となったため,次年度へ向けた,船上でのピストンコアの組み立て動画と,堆積物から間隙水を抽出する試料処理の動画を作成した.加えて,船上での採泥時の安全対策マニュアルの作成を行った.本年度は船側との打ち合わせを行い,練習船のウィンチ能力とピストンコアの海底からの引き抜くテンションに合わせた仕様でのピストンコアの組み上げスタイルの決定や,堆積物のフローインを防止するため,ワイヤ長などの調整・決定を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナウィルスの蔓延により当初計画していた日本海での航海が全て中止となったため,試料採取に大幅な遅れが出ている.また本研究では水深1000mを超える海底下のガスチムニー構造周辺での海洋堆積物の採泥を予定していることから,試料採取には船舶の利用が必須である.船舶を利用した調査ではデッキや船内が密となりやすいため,本年度のコロナウィルスの蔓延状況において,採泥の実施は不可能であった. 本年度は次年度以降の乗船時の教育活動に向けて,船上でのピストンコアの組み立て動画と,堆積物から間隙水を抽出する試料処理の動画を作成した.加えて,船上での採泥時の安全対策マニュアルの作成を行った.これらの動画やマニュアルは今後コロナウィルス感染防止のため,レクチャーや講義がオンライン対応になった場合にも対応できるような仕様となっている.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は日本海へ航行する本学の練習船を利用し,採泥を実施する予定である.コロナウィルス蔓延の影響から乗船人数の制限が予測されるため,ピストンコアの組み立てなど,最小限の人数でコアの組み上げや試料採取できる4 mの仕様で採泥を行う計画である.4 mのピストンコアの堆積物からは,海底深部からのヨウ素のフラックスを正確に定量するため,堆積物コア1mにつき,3~5試料と高頻度で間隙水溶存イオン・ガス用の試料を採取する.採取した間隙水溶存ガス試料はメタン・エタン・プロパンの濃度を測定し,ヨウ素と親和性の高いメタンの分布を明らかにする.間隙水溶存イオン試料からは主要溶存イオン濃度を測定し,コア中にガスハイドレートが含まれていた場合,塩化物イオン濃度からコア中のガスハイドレート含有量を算出することが可能である.ヨウ素濃度の測定からはヨウ素の鉛直分布と共にフラックスを定量的に明らかにする.
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Causes of Carryover |
当該助成金が生じた状況として,コロナウィルス蔓延のため,本年度予定していた日本海における航海が中止となったことが理由に挙げられる.航海の中止により,本年度使用するはずであった,運航にかかる船舶の油代や,ピストンコア実施にかかる消耗品費,ピストンコアの保険代,研究者の乗下船にかかる旅費が未使用であったため,次年度使用額が生じた. 翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画においては,本研究全体で計画した採泥実施点数は変を変えずに,次年度以降において,本年度実施できなかった採泥点を追加で実施していくことで,本年度生じた次年度使用額にかかる費用を順次,採泥に利用していく計画である.
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