2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K15217
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
土屋 雄司 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (50736080)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 高温超伝導体 / 整流効果 / 薄膜成長 / 磁束量子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高温超伝導薄膜における臨界電流の非対称性のメカニズムを解明する。省エネルギー電力機器の問題を根本から解決する超伝導応用の新たな機能性として超低消費電力で 動作する超伝導ダイオードの開発が期待される。その軸として、申請者らが発見した超伝導 ダイオード特性について、その発現メカニズムを解明する。 計画している研究項目は、(A) 超伝導ダイオード特性を発現する高温超伝導薄膜のナノ構造分析、(B) 超伝導ダイオード素子の設計および整流効果の実証、の2つである。 本年度は、(A) 超伝導ダイオード特性を発現する高温超伝導薄膜のナノ構造分析に向けて、パルスレーザー成膜装置を用いて高温超伝導薄膜を成膜し、広い温度磁場範囲で非対称臨界電流の評価を行った。高温超伝導材料は、YBa2Cu3OyおよびSmBa2Cu3Oyとし、中間層に酸化物バッファ層を導入した。非対称臨界電流の評価は、名古屋大学にてPPMSおよび東北大学金属材料研究所強磁場超伝導材料研究センターにて10T-CSMを用いて10-90K、0-10Tにて行った。 結果、高温の77Kにおける臨界電流の非対称性は0.2Tでピークを示し、0-4Tに現れ、徐々に減少した。また、その値はバッファ層の導入によって4倍に向上した。一方、低温の10Kでは、非対称性の方向が逆転し、その値はバッファ層の有無に依らなかった。 以上の結果は、臨界電流の非対称性のメカニズムが、薄膜の基板界面および薄膜の表面における磁束量子に対する表面バリアの大小が温度により変化することを示しており、本研究の目的である高温超伝導薄膜における臨界電流の非対称性のメカニズムを解明において、新しい知見であるとともに、メカニズム解明において重要な実験成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請当初の本年度までの目標は、高温超伝導薄膜における整流特性と結晶構造組織との相関を明らかにし、さらに物理的な観点から超伝導薄膜における整流特性の原理を理解することであった。研究実績の概要で述べたように、本年度は高温超伝導薄膜の作製および低温強磁場における評価を行い、その現象について物理的解釈を行った。よって、本年度までの研究課題は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究は順調に進展している。今後の研究方針は、研究開始当初と同様に、超伝導ダイオード素子の設計および整流効果の実証を行う予定である。将来的な超伝導コイルシステムへの適応にむけて、高温超伝導薄膜における整流効果をパッケージ化し素子とすることが重要である。また、本年度得られた知見を活用し、今後は、薄膜底面及び表面における表面バリアについて、運転温度、磁場条件に対して、最適な薄膜構造を選定する予定である。
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Research Products
(18 results)