2022 Fiscal Year Annual Research Report
有機分子集合体が織りなす励起子生成機構の解明に向けた新規な励起状態計算法の開発
Project/Area Number |
20K15231
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
土持 崇嗣 神戸大学, システム情報学研究科, 准教授 (40763933)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 電子状態理論 / 摂動論 / スピン射影 / 量子化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、一重項励起子開裂などにおいて重要となる励起状態を量子化学計算を用いて低コストに記述することを目指し、理論開発を行った。特に必要な励起状態を直接的に決定することにより非断熱状態として高精度計算し、これらを基底として用いて構築した有効ハミルトニアンを対角化することで、複雑な励起状態を断熱状態として記述する手法を開発することを目的とした。本研究ではスピン射影演算子を活用することで、一重項励起状態を正確に取扱い、また得られるゼロ次の波動関数を摂動展開することによって精度の向上を目指した。 本研究では、 まずスピン射影ハートリーフォックに対する二次の摂動論の基盤構築を図った。理論の改良およびスーパーコンピュータのための並列アルゴリズムの高度化を行うことで、計算精度と計算速度を大幅に改善することに成功した。その上で目的の励起状態を求めるために、ゼロ次の励起状態波動関数を平均場近似であるハートリーフォックやスピン射影ハートリーフォックによって最適化することを目指した。励起状態を近似する非aufbauな初期電子配置を用いた場合、通常の自己無撞着的な最適化では変分原理によって基底状態に収束してしまうが、ヘシアンが正定値行列であることを必要としないSymmetric Rank 1法を開発しこれを適用することで、定性的な励起状態を直接決定することに成功した。一電子励起状態の記述に置いては、ハートリーフォックではスピン対称性が破れ、精度の低下が顕著であるのに対し、スピン射影ハートリーフォックでは期待通り一重項励起状態を定性的に記述できることがわかった。これに対して摂動論や結合クラスタによる補正を加えることで、高精度に励起状態を再現することに成功した。また、本研究における副産物として量子コンピュータにおいて実用的な励起状態計算アルゴリズムの開発に至った。
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