2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of a novel fluorescence lifetime measurement method using entangled photon pairs
Project/Area Number |
20K15237
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
松崎 維信 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 基礎科学特別研究員 (70830165)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 量子もつれ光 / 蛍光寿命 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、cwレーザー由来の量子もつれ光を用いて蛍光寿命測定を行うという、本研究で提案した新しい原理に基づく蛍光寿命測定法の原理検証実験を行った。 まずは測定装置の開発を行った。光源である量子もつれ光は、266 nmのcwレーザーを非線形結晶に照射することで、パラメトリック下方変換により得た。得られた量子もつれ光は波長が相関した光子対からなっているが、これらをバンドパスフィルターに通すことで波長を532 nmに限定し、また空間分布の違いを利用することでそれぞれの光子対を光子1つずつに分割した。このようにして分割された光子のうち、片方は試料に照射して試料中の分子を光励起することに用い、その結果生じた蛍光の光子を単一光子検出機によって検出した。一方、もう片方の光子はそのまま別の単一光子検出器で検出し、量子もつれ光が発生したタイミングを記録するのに用いた。これら2つの単一光子検出器で光子が検出される時間差を測定することで、蛍光が分子の光励起からどのくらい遅れて発生するか、すなわち蛍光寿命はいくらかを測定することができる。 次に、ローダミン6G溶液を試料として用いることで、実際に蛍光寿命の測定を行った。得られた蛍光減衰曲線はパルスレーザーを用いた従来法に基づく結果とよく一致しており、本研究で新しく開発された手法によって蛍光寿命測定が可能であることが実証された。この測定における時間分解能は0.2ナノ秒と見積もられたが、これは検出器の応答速度で決まった値である。したがって、本研究では大元の光源としてcwレーザーを用いているにも関わらず、パルスレーザーを用いた場合と同等の高い時間分解能で蛍光寿命の測定を行えることが実験的に示された。 本研究により実証された測定原理については、国際特許としてPCT出願した(PCT/JP2021/006681, February 22, 2021)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標は、原理検証実験を行い、提案した原理に基づく測定が実現可能であることを示すことであった。研究実績の概要に記載したように、これは無事に達成することができた。従って、初年度は計画通りに研究を進めることができ、当初の計画通りに次年度の研究に取り掛かる準備が整ったと言うことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
近年、蛍光寿命測定の対象としては生体系などの不均一な系が選ばれることが多い。このような系では試料内の各々の位置で蛍光寿命が異なる場合が多いため、顕微鏡観察下で空間分解しつつ蛍光寿命の測定を行うことが重要である。そこで最終年度である次年度は、量子もつれ光を光源とする蛍光顕微鏡を新たに自作し、本研究で開発した新しい測定原理に基づく蛍光寿命測定が顕微鏡観察下においても行えることを実証する。更に、試料内の様々な位置における蛍光寿命を系統的に測定することで、蛍光寿命イメージング(FLIM)が量子もつれ光を光源として実現可能であることを示す。 また、本研究で開発した量子もつれ光に基づく蛍光寿命測定法は、パルスレーザーを用いる従来法と比べて励起光のピークパワーが大幅に低いため、試料への光ダメージが小さいと期待されるが、このことについても実験的に検証を行う。そのために、上記の自作の蛍光顕微鏡を拡張し、パルスレーザーを用いた測定も行えるようにする。そして、励起光源としてパルスレーザーを用いる場合と量子もつれ光を用いる場合について、それぞれ蛍光寿命測定を繰り返し行ってその経時変化を調べることで、試料への光ダメージの起こり方を定量的に比較する予定である。
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Research Products
(1 results)