2020 Fiscal Year Research-status Report
巨大湾曲π電子系空間を有するドーム状ナノカーボン分子の設計・合成
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20K15254
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池本 晃喜 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 講師 (30735600)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ナノカーボン / 構造化学 / π電子 |
Outline of Annual Research Achievements |
フラーレンやカーボンナノチューブの発見以降,湾曲π電子系からなる非平面構造を有したナノカーボンは,その審美性のみならず,湾曲π電子系からなる特異な空間を有するために一大巨大研究分野を築いている.しかしながら,これら湾曲π電子系空間の特異性について,原子・分子レベルでの精密な「構造化学」に立脚して議論している例はほとんどない.このような背景を踏まえ,本研究では,巨大湾曲π電子系空間を有するドーム状ナノカーボン分子を設計・合成し,その巨大湾曲π電子系空間の特性を「構造化学」に立脚して解明することを目的とする.主題となる研究項目としては,1. 巨大湾曲ドーム状ナノカーボン分子の設計・合成,2. 巨大湾曲π電子系空間の化学となっている. 令和2年度は,巨大湾曲ドーム状ナノカーボン分子の設計・合成に着手し,以下の3点の具体的な成果を挙げた.1. 巨大ナノカーボン分子の設計・合成について,「フェナイン」を活用するという独自の戦略について総説としてまとめた(Bull. Chem. Soc. Jpn.誌に報告).2. 巨大π電子ナノカーボン分子のアルカリ金属還元を達成し,それによって環電流が大環状骨格全体に流れる現象を見出した(Angew. Chem. Int. Ed.誌に報告).3. ナノカーボン分子として,特に直鎖連結型芳香族炭化水素分子が優れたOLEDの材料となることを見出した(Chem. Asian J.誌に報告).以上のように,巨大湾曲ドーム状ナノカーボン分子の設計・合成とそのπ電子系空間の化学を行うに当たって基礎となる成果をあげるに至っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では,研究初年度となる令和2年度は主題となる研究項目のうち,1. 巨大湾曲π電子系空間を有するドーム状ナノカーボン分子の設計・合成までを目標としていた.ドーム状ナノカーボン分子の合成においては,骨格伸長可能なドーム状ナノカーボン分子の合成を達成しており,概ね順調に研究が進展していると言える.もう一方の研究項目である,2. 巨大湾曲π電子系空間の化学についても既に着手し始めており,大環状π電子系の芳香族性について重要な知見を得るに至っている.
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Strategy for Future Research Activity |
既に合成を達成した骨格伸長可能なドーム状ナノカーボン分子を鍵として,種々のドーム状ナノカーボン分子の設計・合成を行なっていく.これらのドーム状ナノカーボン分子は,2 nmを越える巨大π電子空間を有しているため,様々なゲスト分子の包接を行なっていくことで,その空間の特異性を解き明かしていく予定である.
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Causes of Carryover |
当該年度は,本研究の主題である「巨大湾曲π電子系空間を有するドーム状ナノカーボン分子」の合成ルート開拓に注力した.ルート開拓にあたっては,小スケールの合成で検討を行なったため,試薬・物品費の購入額が当初予定よりも低く済むこととなったことが次年度使用額が生じた理由である.今後は,既に合成を確立した,骨格可能伸長可能なドーム状ナノカーボン分子の大量合成を行ない,これを鍵中間体として,さらなる巨大ナノカーボン分子の設計・合成を行なっていく予定である.これらを行なっていくためには,大スケールで試薬・物品購入が必要となるため,次年度使用額をそれらに充てる予定である.
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Research Products
(12 results)