2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K15260
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
橋川 祥史 京都大学, 化学研究所, 助教 (80804343)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ナノカーボン / フラーレン / 金属錯体 / 水分子 / ホスフィン |
Outline of Annual Research Achievements |
フラーレンC60への連続的な開口部構築反応を機軸としたtop-down法により,エルボー型炭素ナノケージの合成を行なった.2つ目の開口位置に由来し,異なるナノエルボー分子の合成・単離に成功した.その選択性および反応性はフラーレン骨格上の軌道係数の大きさ並びにひずみの程度に依存することがわかった. 水酸化開口フラーレン誘導体に対するカチオン認識能について検討した.溶液NMR滴定の結果,水酸化開口フラーレン誘導体は,リチウムイオンに対してサンドウィッチ構造となるように両側から挟みこんだ配位様式をとることがわかった.リチウム配位により,フラーレン骨格内部の静電ポテンシャルは中性からカチオン性へと顕著に変化することが示唆され,これを内包水分子のダイナミクスを用いて検証した.その結果,カチオン性サブナノ空間に取り込まれた水分子の回転の活性化エネルギーが上昇することが実験的に明らかとされた. 開口フラーレン誘導体は,開口部上に反応活性なα,β-不飽和カルボニルおよび,1,2-ジカルボニル部位をもつ.代表的な有機リン化合物であるホスフィンとの反応を検討した結果,低温では前者と反応しベタイン体が速度論支配の生成物として,高温では後者と反応しイリド体が熱力学支配の生成物として得られることがわかった.この生成メカニズムを実験および理論の両視点から考察した結果,後者の生成については,これまで考えられてきたカルベン機構ではなく,ベタイン中間体を経由するSN2反応を含む機構が妥当であることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では,①フラーレンの有効内部空間の拡張,②内部空間を利用したその場反応の観測やその場測定,③連結炭素ケージの創製ならびに空間を介した単一分子レベルでの長距離相互作用の検出を目指している. 初年度の研究においては,エルボー型ナノカーボン分子の創製に成功し,内部空間が有効に拡張されたことが単結晶X線構造解析によって明らかとなった.また,カチオンを介した連結炭素ナノケージの創製およびその内部空間における単一水分子の性質について検討を行ない,本研究課題で目指す炭素ナノケージを用いた単一分子化学の研究基盤が整った.
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Strategy for Future Research Activity |
計画する連結炭素ナノケージのうち,金属イオンを介した手法の確立に成功した.そこで,水素結合や共有結合により連結された新たな連結炭素ナノケージの創出を目指し,空間を介した長距離相互作用の検出を進める. また,2つの開口部もつエルボー型ナノケージの反応を解明するとともに,小分子の導入を検討する.
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Causes of Carryover |
初年度では,電子計算機を用いた理論計算を中心に研究を進めた.次年度では,この成果をもとに,実際に合成および測定のための装置・機器の購入が必要であり,研究計画に即した使用計画を立てている.
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Research Products
(14 results)