2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K15262
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
宮崎 隆聡 福岡大学, 理学部, 助教 (70788504)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 多環芳香族炭化水素 / 構造有機化学 / π電子材料 / 吸収・蛍光 / 光物性 / 有機π電子 / ドナー-アクセプター |
Outline of Annual Research Achievements |
多環芳香族炭化水素(PAH)はベンゼン環の縮環形式により種々のHOMO-LUMOギャップや安定性を持ち、それらに起因した光化学的特徴を持つ。本研究はY字型に縮環したPAHを合成し、その構造における光化学的特性を評価する。まず、溶解性や合成面を考慮して、Y字型の構造を持つ2つのベンゾチオフェンが縮環した2,3-ナフタルイミド1を設計した。1は4,5-ジクロロフタルイミドのイミド窒素上への側鎖導入、鈴木カップリングによるベンゾチオフェンの導入、光環化反応を経て合成することができた。イミド窒素に導入する側鎖として、2-エチルヘキサンとジエチレングリコールモノメチルエーテルの2種類を用いた。合成した1の吸収スペクトル、蛍光スペクトルをシクロヘキサン、トルエン、ジクロロメタン、アセトニトリル、DMF、DMSO、メタノールの6種類の溶媒中で測定した。吸収スペクトルにおいては、大きな吸収ピークのシフトは観測されなかったが、蛍光測定においては、シクロヘキサン中では青色の蛍光を、メタノール中では黄色の蛍光を示すといった、溶媒により異なる蛍光ピークを示した。この挙動はイミド窒素上の側鎖の違いによらず、観測された。ET(30)と1の各溶媒でのストークスシフトをプロットしたところ、良好な直線関係となり、1は蛍光ソルバトクロミズムを示すことが明らかとなった。量子化学計算よりHOMOとLUMO軌道を計算したところ、HOMOはベンゾチオフェン側に、LUMOはイミド基側に局在化しており、push-pull型の構造となっていることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は目的としていたY字型の骨格を単工程で形成することに成功した。また、蛍光測定により1が蛍光ソルバトクロミズムを示すことが明らかとなった。1と同様にアミノ基を持つ2,3-ナフタルイミドも蛍光ソルバトクロミズムを示すことが知られているが、合成が煩雑である。一方で1はアミノ基の代わりに2つのベンゾチオフェンを持ったY字型の分子であり、合成が容易である。これはpush-pull型のY字型分子が蛍光ソルバトクロミック材料として利用可能であることを示しており、更なる機能向上や機能発現が期待できるものである。以上より、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
1はベンゾチオフェンを縮環させることでY字骨格を形成した。そこで、ベンゾチオフェンの代わりにベンゾフランを用いて、Y字型分子の合成を行い、吸収スペクトルや蛍光スペクトルを測定して、その光化学的機能を評価する予定である。また、更なる機能化を目指し、環状ホスト分子と融合させ、その蛍光特性をさらに特徴づけることを目指す。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス蔓延防止策としての人数制限措置により、十分な研究時間と機会の確保が難しかったことから、当初の研究計画を次年度まで延長することで再構築したため、次年度に使用額が生じた。使用計画としては、物品費として2,000千円、旅費として200千円、その他費用として240千円程度の計約2,440千円を予定している。物品費は全て消耗品である。旅費は学会参加のために使用し、参加学会は国内学会2件の予定である。その他費用としては学会参加費と測定依頼費に使用する予定である。
|