2020 Fiscal Year Research-status Report
ラジカル導入有機π電子系の基底状態及び励起状態におけるπトポロジー依存性の解明
Project/Area Number |
20K15263
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
吉田 考平 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特任助教 (20845789)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | πトポロジー / 非交互炭化水素 / フェノチアジン / ラジカルカチオン |
Outline of Annual Research Achievements |
アズレンは最低励起状態から発光するKasha則を満たさない分子として光化学の分野を中心に古くから研究されてきており、さらに分子内のπ電子軌道のつながり(πトポロジー)を考慮した分子設計によるスピン整列の予測が単純に適用できない非交互炭化水素π電子系としてもその特異な分子構造に興味が持たれる。本年度はこのアズレンを光励起可能なπ電子系として着目し、有機ラジカルを組み込み、アズレン部位の励起一重項状態とラジカル部位とのスピン交換を介した増強系間交差による励起三重項状態の観測によりアズレンが与えるπトロポロジーの解明を目的とした。 フェノチアジンは低い酸化電位を有する電子ドナーであり、酸化により生成するラジカルカチオン体は安定なスピン種である。このフェノチアジンをアズレンに 1 つ導入した一置換体(PTZ-Az)を合成して、フェノチアジン部位を選択的に化学酸化することで目的のアズレン-ラジカル連結系の構築を目指した。クロスカップリング反応によりPTZ-Azを合成し、酸化特性を評価するためサイクリックボルタンメトリーを行った。その結果、フェノチアジン部位に由来する可逆な酸化波を観測し、選択的酸化により安定なラジカルカチオン体になることが示唆された。いくつかの酸化剤を用いて化学酸化にて目的のラジカルカチオン体の合成、単離を試みたが、合成はできるがラジカルカチオン体の分解が観測されて単離できるほどの安定性は有していなかった。ラジカルカチオン体をより安定にするため、分子設計を新たに行い新規分子システムの合成を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
目的とする分子システムの観測には成功したが、不安定であり、単離が困難であった。より安定と考えられる分子システムをいくつか新たに設計して合成を行っており遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究次年度の目的物であるフェノチアジン部位を2つアズレン分子に導入した(PTZ2-Az)の合成と並行して研究を進めていく。基底状態の電子構造、励起状態の電子構造をそれぞれ明らかにすることで、非交互炭化水素系分子がπトロポロジーの与える効果を解明したい。
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Causes of Carryover |
学会の中止や満足に研究できない期間があり、当初の予定より研究計画が遅れてしまった。翌年度分として請求した助成金は主に物品費を中心に使用して研究をより推し進めていく予定である。
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