2020 Fiscal Year Research-status Report
カリックス[4]アレーンの内部空間を利用した重い多重結合化学種安定化法の確立
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20K15265
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
桑原 拓也 中央大学, 理工学部, 助教 (60768654)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | カリックスアレーン / チアカリックスアレーン / スタンニレン / プルンビレン / 重いカルベン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では反応活性な重い二重結合化学種の新しい安定化法として、カリックスアレーン類の内部空間を利用する手法の確立を目的としており、今年度は重い二重結合化学種の原料となる化合物の合成・同定・性質解明に主に取り組んだ。 カリックス[4]アレーンおよびチアカリックス[4]アレーンの1,3-ジエーテル類に高周期14族元素二価化学種(ジアミノスタンニレン・プルンビレン[E{N(SiMe3)2}2)を作用させることで、これらの典型金属で架橋されたカリックスアレーン類を新規に合成した。カリックスアレーン-スズおよび鉛錯体は、金属がカリックス[4]アレーンの外側に位置するexo体、内部に位置するendo体がそれぞれ速度論的・熱力学的生成物として得られ、exo体からendo体への異性化を確認することができた。一方、チアカリックス[4]アレーン類についてはそのような異性体は確認されず、exo体のみが選択的に得られ、加熱による異性化も進行しなかった。これまでにカリックスアレーンと高周期14族元素二価化学種からなる錯体はいくつか報告例があるが、対応するチアカリックスアレーン錯体については本研究成果が初の報告例であり、さらにカリックスアレーンの系とチアカリックスアレーンの系とで異なる挙動を見いだした点で意義深いといえる。なお、本成果の一部は、英国王立化学会RSCの無機化学系の専門誌「Dalton Transactions」に掲載された。 また、カリックスアレーンの部分構造であるメチレンジフェノール類に関しても同様の反応を検討することで、メチレンジフェノール-スタンニレン錯体の合成に成功した。こちらの成果については、日本化学会春季年会で口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で扱う高周期14族元素二価化学種は、想定以上に湿気に対して不安定であり、合成・単離にかなりの苦労を強いられたが、幸いにもそれらの合成法を確立することができた。これらの化合物は、研究実績に記載の通り、重い二重結合化合物の原料となる化学種であることから、本研究の最終目的物の合成を検討する準備が整ったといえる。また、チアカリックスアレーンの系では予期せずカリックスアレーンの系とは異なる現象を見いだすことができ、学術論文として発表することができた。 以上より、進捗状況は順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、既に合成に成功しているカリックスアレーン-テトリレン錯体のendo体を原料に用い、重い二重結合化学種の合成を検討する。例えば、硫黄やN2Oなどのカルコゲン源との反応による重いカルボニル化合物の合成や、二塩化スズとの反応、続く還元により、重いビニリデンの合成を目指す。また、endo体だけでなくexo体や、チアカリックスアレーンの系やメチレンジフェノールの系に関しても同様の反応を行うことで、カリックスアレーンの内部空間が重い二重結合化学種の安定化にどのように寄与するかも調査する予定である。 想定される課題としては、スズや鉛の二価化学種は反応性が高くないため、これらの金属を用いた二重結合化学種の合成が困難である可能性が挙げられる。そのような場合、中心金属をより反応性の高いケイ素やゲルマニウムに変更することで対応すればよい。カリックスアレーン-ゲルミレン錯体に関してはいくつか報告例があるが、対応するケイ素類縁体については一切報告例がないためその合成だけでも十分に価値のある研究として位置づけられるであろう。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により、消耗品費や旅費が当初の予定と比べ少なめとなったので、次年度に繰り越すこととした。
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