2020 Fiscal Year Research-status Report
強力な抗腫瘍活性を持つamphidinolide N類の網羅的全合成と活性評価
Project/Area Number |
20K15270
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
梅宮 茂伸 東北大学, 理学研究科, 助教 (10802754)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 全合成 / マクロリド / 不斉アルドール反応 / 有機触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究計画に従い、amphidinolide Nの推定構造において最も信頼性の低いC7、C10、C14の立体を自在に作り分ける手法の確立を試みた。申請者は、これまでに研究室において独自に開発した不斉アルドール反応を利用することで、C7位およびC10位の立体を制御しながらamphidinolideの部分構造を構築する手法をすでに確立している。今回、これまでに確立した方法論を利用してamphidinolide NのC1-C13フラグメントを合計4種類合成した。すなわち、C7位、C10位の立体それぞれについて、(R,R)、(R,S)、(S,R)、(S,S)の立体を有するフラグメントを、それぞれ2g程度合成した。このようなC1-C13フラグメントはamphidinolide Nの中でも最も官能基化されたフラグメントであり、合計で40段階程度の工程数を必要とする。このような複雑なフラグメントをグラムスケールで供給することができる、非常に堅牢なルートが確立できた。次に、(S,R)の立体を有するジアステレオマーを原料とし、今回新たに開発したジアステレオ選択的アルキル化反応を行うことで、C1-C13フラグメントと、C14-16フラグメントのカップリングに成功した。本反応は非常に高い収率で進行し、新たに構築されるC14位の立体はC16位に対してsynであることがNOESY等の測定により分かった。その後、C17-C29フラグメントとのカップリングを連続的に行うことで、amphidinolide Nの全炭素が導入された重要中間体の合成に成功した。今後はマクロラクトン化を行ったのち、官能基変換と保護基の脱保護を行い、C14位とC16位がsynの立体構造を有するamphidinolide Nの全合成を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
C1-C13フラグメントを4種類、それぞれ2g以上合成することができ、予定よりも早く鍵反応であるジアステレオ選択的アルキル化反応の検討を行うことができた。さらに反応で得られた化合物は想定していた立体を有しており、さらに収率も良好であった。このため、今後最終段階での検討を十分に行えるだけの量を供給することができる、極めて信頼性の高いルートを構築することができた。C17-C29フラグメントの合成法についても、ルートを変更することでこれまでよりも8段階短い工程で合成することに成功し、さらにその収率は約18倍にまで向上した。これらの結果より、ここまでの合成に関しては順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は得られたカップリング体を利用し、まずはマクロラクトン化を検討する。このようなマクロリド化合物においては、一箇所立体が異なるだけで全く違った最安定配座を取ることもあり、場合によっては困難が想定される。そのような場合、まずはアセトニド基をシリレンに変更する、または先にアセトニドの脱保護を行いピラン環を構築したのちにマクロラクトン化を試みるなど、コンフォメーションを変化させる事で問題を解決する予定である。マクロラクトンが得られたのち、C9位の酸化やエキソメチレン部位の導入、全保護基の脱保護を順次行い、amphidinolide Nの全合成を達成する予定である。
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