2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K15273
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邉 康平 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特任助教 (90845083)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 芳香族求核置換反応 / 遷移金属触媒 / 芳香族化合物 / ホウ素化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では有用化合物の合成終盤でのファインチューニングを志向し、不活性な炭素-フッ素(C-F)結合の変換を基軸とする“フッ化アリール類の触媒的芳香族求核置換反応の開発”を目指す。C-F結合は強固な結合である一方で、芳香族求核置換反応においてはC-F結合は反応性が高いとされる。しかしながら、ニトロ基などの強力な電子求引基の存在が必須であり実用的な反応とは程遠く、新たな戦略に基づく強力な方法論の開拓が必要である。そこで、第一の戦略として金属原子の芳香環への配位による電子密度の低下に着目し、高度に電子欠損な状態にある金属錯体を用いることで芳香環上の電子密度を効果的に下げ、芳香環上のC-F結合の活性化ができると着想した。 この触媒設計としてホウ素と炭素の異核の二重結合からなるボラタアルケンを配位子として組み込んだ金属錯体を活用することを計画した。金属錯体の配位子としての多様なボラタアルケン誘導体の合成法を確立すべく検討を行い、設計・合成したジブロモボラン誘導体に対しアリールリチウム試薬を作用させることによって、種々の電子不足なアリール基をホウ素上に導入したボラタアルケン前駆体合成ルートを見出した。この結果を足掛かりに電子欠損金属触媒の創製に向けて研究を行う。 また、不活性結合の変換反応の開発に向けて、反応場(溶媒)としての水にも着目した。生体分子の直接利用や水中ならではの特異的な反応性を不活性結合の変換反応に活用すべく、水を反応場とした遷移金属触媒反応を検討している。その取り組みの中で、水中での銅-スクロース触媒によるハロゲン化アリールの水酸基化反応を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究遂行のためのボラタアルケン配位子の前駆体の合成法として、ホウ素上の置換基の自在なデザインが可能な手法を確立することができ、電子欠損金属錯体の創製のための重要な基礎を築くことができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した前駆体の合成手法を足掛かりとして、ボラタアルケン配位子の合成、そして、ボラタアルケン配位金属錯体の創製を目指す。一方で、芳香族求核置換反応において、触媒回転のためには芳香環の交換反応も必須である。第二の戦略としてこれを促進する金属錯体の設計も視野に入れて、フッ化アリールの触媒的芳香族求核置換反応に向けて研究を行う。また、今回開発した水中での反応の知見も取り入れ、不活性結合変換反応の開発に取り組む。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の状況によって、繰越が生じた。
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