2020 Fiscal Year Research-status Report
Continuous synthesis of chiral molecules by cooperative systems using heterogeneous metal nanoparticles and organocatalysts
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20K15274
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安川 知宏 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (40755980)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 不均一系触媒 / 金属ナノ粒子 / フロー反応 / 窒素ドープカーボン / 不斉触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
担持金属ナノ粒子触媒は、高活性かつ高頑健性を併せ持つ不均一系触媒として期待されるが、精密有機合成、特に不斉触媒反応への応用例は、非常に限られていた。金属ナノ粒子を用いた不斉触媒反応の主な課題は,活性金属種の電子的性質の柔軟な調整と、金属漏出の抑制が難しいことが挙げられる。この課題に対し、金属に配位能を有する担体を用いれば、担体からの相互作用によって金属ナノ粒子の活性化と安定化が同時に期待できると考えた。 本研究では、研究代表者が最近開発した高分子カルセランド法に基づく窒素ドープカーボン担持金属ナノ粒子触媒調製法を用いて、金属ナノ粒子触媒による新規不斉反応への展開を目指した。ポリビニルピリジンを窒素源に用いた、窒素ドープカーボン担持Rhナノ粒子触媒(NCI-Rh)を開発し、キラルリン酸を共触媒としたカルベノイドのN-H結合への不斉挿入へ適用した。様々な種類のキラルなα-アミノ酸誘導体を高いエナンチオ選択性・高収率で合成することに成功し、NCI-Rhは7回の回収・再使用をすることができた。さらに、NCI-Rhを充填したカラムを用いて、連続フロー反応を実証した。フロー反応においては、固体塩基を充填したカラムを連結することで、キラルリン酸の回収も可能であった。本フロー反応系により、90時間以上にわたって目的物が効率的に得られ、キラル源を回収することができた。 以上のように、当初の計画通り窒素ドープカーボンを、配位修飾能を持つ担体として活用し、キラルブレンステッド酸を共触媒に用いることで、不均一系触媒による不斉結合生成反応の開発に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ポリビニルピリジンを窒素源に用いた、窒素ドープカーボン担持Rhナノ粒子触媒(NCI-Rh)による、キラルリン酸を共触媒としたカルベノイドのN-H結合への不斉挿入反応の開発に成功した。窒素ドーパントを含まない担体に固定化したRhナノ粒子ではほとんど触媒作用が見られず、本反応系において、窒素ドーパントは触媒活性とエナンチオ選択性の両方に重要な役割を果たしていることを見出だした。XPSや電子顕微鏡を始めとする種々の機器分析により、窒素ドーパントが配位子のように作用し、金属の活性化と安定化の両方に寄与していることを見出だした。本反応において、溶液の金属漏出は検出限界以下であり、フロー反応系における当量反応剤を用いた対照実験により不均一系で反応が進行していることが示唆された。 窒素ドープカーボン担持金属触媒の不斉C-C結合生成反応への更なる展開を目指し、他の金属種や触媒調製手法などを検討した。チタンを同方法で担持した触媒(NCI-Ti)を更に強酸で処理することで、固体強酸触媒が調製できることを見出だした。本触媒はFridel-Crafts反応を効率的に進行させることができた。また、亜鉛を同方法で担持した触媒(NCI-Zn)を用いて電極を作成し、これを用いた電解Barbier反応に適用した。反応は円滑に進行し、かつ亜鉛の溶出も抑えられた。 以上、当初の研究計画は順調に進み既に成果を挙げることができた。窒素ドープカーボン担持触媒を固体強酸触媒や電極触媒へ応用するなど、概念拡張にも成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
窒素ドープカーボン担持金属ナノ粒子触媒の概念拡張として見出した、固体強酸触媒や電極触媒への応用を引き続き検討する。 固体強酸触媒については、他の前周期遷移金属も検討し、反応としても不斉点が構築できるようなものを試みる。具体的には、Diels-Alder反応などの環化反応に適用できないか検討を行う。 電極触媒については、まずNCI-ZnによるBarbier反応系の最適化し、基質一般性の検討を行う。亜鉛の溶出が完全には抑えきれていないので、触媒調製法を改良する。具体的には、より窒素含有量の高い高分子を用いるなど、窒素源に着目して検討を行う。回収、再使用の検討やXPSなどの機器による分析も併せて行う。また、不斉配位子存在下で反応を行い、不斉触媒系への展開も行う。
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