2020 Fiscal Year Research-status Report
金属ヒドリド種/ルイス酸触媒によるラジカル環化反応の開発
Project/Area Number |
20K15284
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
林 裕樹 北海道大学, 化学反応創成研究拠点, 特任助教 (90802223)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 計算科学 / 量子化学計算 / 反応経路予測 / 含窒素複素環化合物 / 環化付加反応 / 脱芳香族化反応 / 三成分連結反応 / ジフルオロカルベン |
Outline of Annual Research Achievements |
含窒素複素環化合物は様々な医薬品に含まれる重要な分子骨格である。本研究課題では、同化合物を目的分子とする新規ラジカル環化反応の開発に焦点を当てて、まず量子化学計算によって同化合物が生成可能な反応経路を調べた。この際、人工力誘起反応(AFIR)法と化学反応経路自動探索(GRRM)プログラムを用いて、計算の際に入力した分子から起こりうる全ての反応経路を網羅的に算出した。その結果、いくつかの新規ラジカル環化反応の他に、ピリジン、ジフルオロカルベン、およびC=O、C=N、C=C、C≡Cなどの不飽和結合を持つ求電子剤の脱芳香族化を経由する1,3-双極子環化付加反応が進行することが示唆された。この新規反応から生成される環化生成物は、窒素原子に隣接した炭素原子に2つのフッ素原子が結合した含窒素複素環化合物であり、医薬品の候補化合物としての利用が期待できる。しかし、その効率的な合成手法は極めて限られている。そこで、AFIR法から得られた計算結果を指針として実験での実現を試みたところ最適化した条件下においてピリジン、ジフルオロカルベン前駆体とその活性化剤、およびアルデヒド、ケトン、イミン、アルケン、アルキンを用いて対応する含窒素複素環化合物を得ることに成功した。また、ピリジン、ジフルオロカルベン、二酸化炭素の三成分連結反応もAFIR法によって予測され、環化反応ではないものの上記と同様の反応条件下で、ジフルオログリシン誘導体の合成にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計算科学を用いて含窒素複素環化合物をターゲットとする環化反応を予測し、実際に具現化することに成功した。また、いくつかの新規ラジカル環化の反応経路も算出されている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続きAFIR法による反応予測を用いて、主に2つの方針で研究を進める。 1)含窒素複素環化合物をターゲットとするラジカル環化反応の開発を目指す。特に天然物や生物活性物質をターゲット分子として、これらの環骨格を構築可能な反応形式をAFIR法を用いて探索し、実験での具現化に挑戦する。 2)前年度に見出した1,3-双極子環化付加反応を検討する。これまでの実験で、アルデヒド、ケトン、イミン、アルケン、アルキンを用いることができることがわかっているので、その基質適用範囲を検討する。またグラムスケール合成や医薬品骨格の合成も目指す。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス蔓延の関係で、予定していた実験や学会参加を実行できなかったため、次年度使用額が生じた。これを前年度から継続して実施しているAFIR法による反応経路予測の実現に向けて、反応条件や基質適用範囲の検討の際に必要となる様々な試薬やガラス器具などの消耗品の使用分として割り当てる。
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