2020 Fiscal Year Research-status Report
複雑化合物における簡便な遷移状態計算手法の確立と天然物合成への応用
Project/Area Number |
20K15285
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
深谷 圭介 富山県立大学, 工学部, 助教 (40821575)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 天然物合成 / 計算化学 / 遷移状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
天然物などの化学合成では、その分子構造が複雑になるにしたがって要する手間や時間が急激に増大する。その一因として未知の分子の反応性を合成計画の段階で十分に予測することが困難であることが挙げられ、これによる合成のやり直し等が複雑分子の効率的化学合成を妨げている。そこで本研究では複雑化合物の反応性を可能な限り正確に予測する手段として、実用的な反応性予測ツールを開発し、実際に天然物の合成経路設計とその全合成へと展開する。今年度は初年度にあたるため、第一段階として合成化学者が簡便に扱うことのできるPythonプログラムを作成した。これは配座探索計算とDFTによる遷移状態計算を高度に組み合わせたものであり、反応物と生成物の3次元構造を入力として与えるだけで、ほとんど人の手を介さずに各種遷移状態とそのエネルギー比較が容易に得られた。また、当研究室で遂行中であるナキテルピオシン全合成の鍵反応において、作成プログラムあるいはその同等のプロトコルを利用して反応エネルギーを評価し、その結果に基づいてモデル化合物を化学合成した。官能基化されたフラン誘導体のDiels-Alder反応が本合成における鍵反応となるが、最も短工程を経ることができるメチル化基質は、遷移状態計算の結果から高い活性化エネルギーが必要となることが判明し棄却された。この結果を受けて、計算化学的に各種誘導体を検討したところハロゲン化基質が比較的低い活性化エネルギーを与えた。そこでブロモ化体を実際に合成し、鍵反応を試みたが目的の反応は進行しなかった。これは活性化エネルギーが十分に低くなかったと結論づけ、再度、反応が進行可能な基質を計算化学的に精査したところ、スルホン化体の反応活性化エネルギーが大きく低下することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は反応性予測ツールとしてのプログラムが実用可能な状態となったことと、これを実際にナキテルピオシン合成研究において簡便に利用できていることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は他の天然物合成に対しても本プログラムを利用し、その適用範囲を評価する。さらに、より簡便で正確な予測ができるようにプログラム改良を図る。
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