2020 Fiscal Year Research-status Report
環歪みの小さいエーテルの炭素-酸素σ結合開裂反応の開発
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20K15290
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
太田 英介 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (80790188)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ジルコノセン / 可視光レドックス触媒 / C-O結合開裂 / エポキシド |
Outline of Annual Research Achievements |
生物活性分子や天然物に頻出するエーテルC-O結合を、温和な条件下で均等開裂できれば、極性機構では得ることの難しい化合物群を提供できると期待される。本年度は、ジルコノセンと可視光レドックス触媒の共同触媒系を開発し、エポキシドのC-O結合開裂反応を達成した。 エポキシドは生物活性分子や合成中間体に頻出する骨格である。通常は求電子剤として利用されるが、C-O結合の均等開裂により生じる炭素ラジカルは求核的に振る舞う。開環後に生成するラジカルは種々の捕捉剤と反応し、官能基化されたアルコールを与える。同形式の変換反応にはチタノセン(III)によるエポキシドの開環反応が古くから知られる。非対称エポキシドを基質とする場合、開環はより安定なラジカルを与える炭素上で進行する。今回、我々はチタノセンよりも酸素親和性の高いジルコノセンを利用すると、開環の位置選択性が逆転することを見出した。量子化学計算により、チタノセンの開環反応は吸熱的である一方、ジルコノセンを利用した場合、開環反応が大きく発熱的になることが示唆された。この結果、ジルコノセンを利用した開環反応では、より原系に近い遷移状態を経て反応が進行したと考えられる。本反応には多様な官能基をもつ基質が利用でき、天然物を含む複雑な分子のC-O結合にも適用可能である。本研究で見出したジルコノセン-可視光レドックス触媒系はC-O結合以外の開裂反応にも応用でき、研究を大きく進展させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前例のないジルコノセン-可視光レドックス触媒系の開発を目的とした、挑戦的な研究提案であったが、コンセプトを実証し実際にC-O結合開裂を達成した。現時点で環歪みのあるエポキシドにしか適用できていないものの、ゼロから開拓し触媒系の構築に至った点は大きな前進である。また、本研究から派生した新たな結合開裂反応の開発も複数進行中であり、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
エポキシドのC-O結合開裂反応の開発の過程で、種々のジルコノセンや可視光レドックス触媒を合成し、いくつかの有望な触媒系を見いだしている。また配位子が反応に及ぼす影響を、量子化学計算により評価する手法も確立しつつある。これらの知見をもとに、今後は環歪みの少ないエーテルC-O結合の開裂を目指す。
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Causes of Carryover |
当初計画していたジルコノセン触媒および光触媒を調製するよりも早い段階で、最適な反応条件を見出したため、当該年度の研究費に未使用額が生じた。令和3年度は、見出した結合開裂の反応速度解析実験を遂行する。禁水・脱酸素条件下でジルコノセン錯体を取り扱わなければならず、各種NMR用重溶媒(重THFなど)に加え、バルブ付きNMRチューブが必要となる。また、反応中間体の単離のためジルコノセン触媒を追加で購入予定である。現在進行中の研究では、新たなジルコノセン-可視光レドックス触媒系を見出しており、それぞれの触媒の合成用試薬として、未使用分の経費を充てることを予定している。
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Research Products
(11 results)