2020 Fiscal Year Research-status Report
人工光合成を志向した光駆動電子輸送ハイドロゲルの開発
Project/Area Number |
20K15296
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
榎本 孝文 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特別研究員 (80865577)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 人工光合成 / ハイドロゲル / 光誘起電子移動 / 電子輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
天然の光合成では,チラコイド膜内に配置された電子伝達系を利用することで,光反応の酸化/還元生成物を膜の内外に分離している. 本研究では,ハイドロゲルマトリクス中に色素と電子受容分子を配置することで人工的な電子輸送系を構築し,連続的な光電子移動を駆動力とする長距離電子輸送の達成を目指している .また,この光電子輸送ゲルを水の酸化触媒および水の還元触媒と組み合わせることで,酸化/還元反応をそれぞれ独立した空間で駆動し,水素と酸素が分離された状態で生成される水の光完全分解系の実現を最終目標として設定している. 令和2年度の研究では,第一に電子受容部位と色素部位を併せ持つハイドロゲルの合成を行った.電子受容部位としてビオロゲン骨格を有するモノマーを選択し,これをN,N-ジメチルアクリルアミド,アミノ基を有するN-アミノプロピルメタクリルアミド,および架橋剤であるメチレンビスアクリルアミドと共重合することで,電子受容部位を有するハイドロゲルを得た.このハイドロゲルを化学還元剤を含む水溶液に含浸させたところ,ビオロゲンの還元に由来する色の変化(無色から青色)が観測された事から,新たに作製したハイドロゲルが電子受容能を有することを確認した.このゲルを,活性エステル基を有するトリスビピリジンルテニウム錯体の溶液に含浸し,ゲル内部のアミノ基と縮合させることで,電子受容部位と色素部位を併せ持つハイドロゲルを作製した.このゲルの切片に対して,犠牲還元剤をふくむ水溶液中で光を照射したところ,光照射に伴うゲルの青変を確認した.この結果から,作製したゲルが光照射に伴って電荷を貯蔵する能力を有していることが示された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度の研究によって,電子受容部位と色素部位を併せ持つ新規ハイドロゲルの合成が達成された.また,このハイドロゲルが,照射された光のエネルギーを利用することで,内部に高エネルギーの電子を貯蔵する能力を有していることを示すことができた.一方で,電子伝達能の評価に関しては,犠牲還元剤を用いた系ではハイドロゲルの内部まで犠牲還元剤が浸透してしまうために,ゲル表面から内部への電子の伝達過程を追跡することは難しいことが示唆された.この問題を解決するためには,犠牲還元剤ではなくゲル表面にのみ担持した酸化触媒から電子注入を行う必要がある.以上を踏まえ,研究のロードマップを再考し,ゲル表面に触媒分子を局在化する方法に関する検討を既に開始している. これらを総合的に判断し,本研究課題はおおむね順調に進行していると判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
令和3年度の研究では,令和2年度に見直した研究のロードマップに基づき,まず光電子輸送ハイドロゲルの表面にのみ触媒分子を担持するための方法を開発する.具体的には,光電子輸送ハイドロゲルを活性エステル基を有する触媒分子の溶液に短時間含浸させることでゲル表面のみで縮合反応を起こし,表面近傍のみに触媒分子が担持されたハイドロゲルを得る.第一に水素発生触媒であるコバロキシム誘導体を一面のみに担持したハイドロゲルを作製し,これを犠牲還元剤の共存下で光照射した際の光水素発生能を評価する.また,触媒を担持する際の含浸時間などのパラメータを変化させながらゲルを作製し,それぞれの光水素発生能を比較することで,効率的な水素発生のために必要なパラメータを検討する.
|
Research Products
(9 results)