2020 Fiscal Year Annual Research Report
Integration of Metal Clusters on Fullerenes and Their Application to Highly Difficult Molecular Transformation
Project/Area Number |
20K15300
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
中前 佳那子 奈良女子大学, 自然科学系, 助教 (20757231)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 金属クラスター / ナノ分子 / 遷移金属 / フラーレン / ナノカーボン複合体 / 分子変換 / 分子触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,電子溜めとして機能するフラーレン上に複数の金属イオンを隣接して集積させた金属クラスターを合成し,このナノカーボン複合体を触媒反応に応用することで,電子授受が容易な配位子を備えた,金属-金属結合が鍵となる高難度分子変換を達成することを目的とした。まず,金属クラスターの調整として,研究室で独自に開発した直鎖型四座ホスフィンrac-[(diphenyphosphinomethyl)phenylphosphino]methane (rac-dpmppm)の光学分割を行い,得られたP-キラルなdpmppmを支持配位子に用いて,世界的にも珍しいキラルな分子性金属鎖となる直鎖状パラジウム8核錯体を合成した。そして,キラルなPd8核鎖とC60との反応からキラル場を拡張させ,ナノカーボン複合体となる新奇な金属多核ユニットの創製を行った。キラルな金属鎖を用いる前に,meso-dpmppmで支持したPd8核錯体に対してC60を反応させて結晶化したところ,[Pd4(meso-dpmppm)2(CH3CN)C60]2(OTf)4 (1)が高収率で得られた。その構造は,Pd8核鎖の中央のPd-Pd間結合が切断され生成する2つのPd4核ユニットの末端のPd(0)イオンとC60の2つの6員環が共有するC=C結合との間で新たに結合が生じ,Ci対称を形成していた。また,ESI-MS及びNMR測定から,CH3CN溶液中でも固体状態の構造を保持していることを確認した。そして,キラルなPd8核錯体を用いてC60との反応を行ったところ,種々分光分析の結果から錯体1と同様のC60が付加した錯体に変化しているものと推定された。CH3CN中のそれらのCDスペクトルにて鏡像的なコットン効果が観測され,キラルな分子性金属鎖からの拡張でC60を含んだユニークなキラル金属多核クラスターを構築できたことがわかった。
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