2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K15306
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
梅山 大樹 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 高分子・バイオ材料研究センター, 研究員 (00821480)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 配位高分子 / 欠陥生成 / スピンクロスオーバー |
Outline of Annual Research Achievements |
M(pz)[M'(CN)4]で表されるホフマン型三次元配位高分子(M = Fe2+, Co2+, Ni2+; M' = Pd2+, Pt2+; pz = ピラジン)は、合成後有機溶媒に浸漬することで部分的な配位子交換が起こり、Mイオンの近傍で欠陥構造を生成することが分かっている。この配位子交換の濃度には溶媒依存性があり、メタノールを用いたときに最も効率的な交換反応が起こることがわかっている。一方で、Fe(pz)[Pt(CN)4]は熱履歴をもつスピンクロスオーバーを示すため、同一温度で高スピン(HS)状態と低スピン(LS)状態の物性比較が可能である。これを利用して、Fe(pz)[Pd(CN)4]のHS状態とLS状態がメタノール中で示す配位子交換の濃度を比較した。この結果、HS状態ではLS状態の約20倍の濃度で配位子交換が起こることが明らかとなり、Mイオンのスピン状態で欠陥生成を制御できることが分かった。これは、八配位の中心にあるFe2+のd軌道のうち、HS状態では反結合性のeg軌道がより多く占有されているため、Fe2+とpzの結合が弱くなり、欠陥生成に有利なためと解釈できる。また、Fe(pz)[Pd(CN)4]の触媒活性は欠陥濃度に依存するため、スピン状態の制御を介して触媒活性をオンオフできる可能性を示唆している。スピン相互作用のような弱い相互作用を介して欠陥濃度や触媒活性のような物性を制御する手法は画期的であり、今後さらに研究を進展させる予定である。
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