2020 Fiscal Year Research-status Report
機械学習を用いた走査型イオンコンダクタンス顕微鏡の高速化
Project/Area Number |
20K15309
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井田 大貴 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (80844422)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | SICM / 生細胞イメージング / 電気化学 / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞表面に存在する微小構造を、細胞が生きた状態で連続観察することは、膜界面で起きる種々の反応の理解に不可欠である。そのような細胞動態を観察するための手法として、走査型イオンコンダクタンス顕微鏡(SICM)がある。SICMは、先端部がナノスケールに先鋭化されたガラスピペット(ナノピペット)を用いて、先端をながれるイオン流が試料のごく近傍で空間的に阻害されることを電流値から検出し、非接触で形状測定が可能な手法である。非接触・非標識での形状測定が可能なことから、生きた細胞の動きに影響を与えず、連続的に動きを評価できる。そこで、詳細な動態を把握するために、SICMの高速化が行われてきた。 これまで、申請者を含めた様々なグループが高速SICMの開発に従事してきたが、装置の換装・プログラムの改良による従来の高速化のアプローチは頭打ちになりつつあり、異なるアプローチからの高速化が求められる。そこで、我々は、機械学習を利用して高速で取得した低画素の画像を高解像度化し、時間分解能の向上を試みる。 本年度は、ハード・ソフト両面での機械学習環境の整備と長期計測のためのSICM装置系の改良・開発を行った。COVID-19の世界的な流行によって実験の進捗に一部支障をきたしたが、測定データの品質の影響が大きいことが分かり、従来のデータを使用するよりも新規にデータを取得する必要があることが分かった。今後は、大量のデータを取得可能なSICM系によって、機械学習の精度を向上させる予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19のパンデミックに伴うテレワークの推奨・実験室の人数制限などから、本年度の前半は研究が進展せず、当初の予定よりも多少遅滞気味である。本年度の後半は、GPUを搭載したPC(ハード面)や機械学習関連のデータフレームの整備(ソフト面)といった機械学習環境を構築し、SICMによる計測像の超解像化の前に固定化細胞を用いた電流値の減少課程の推定を行った。一方で、当初の予想よりも測定データの品質が推定に及ぼす影響が大きいことが分かり、次年度にはデータの品質の向上と推定精度の向上を目指す。 また、機械学習の精度を向上させるためにはデータ量を増やすことが重要であり、大量のSICM像を取得するための装置改良を行った。長時間計測中のドリフト(熱膨張などによるナノピペットー試料間の距離の変化)を低減させるために、ナノピペットのホルダーを改良するなどの施策した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果として、測定データの品質が推定に及ぼす影響が想定よりも大きいことが判明したため、今後はデータの品質と推定精度の向上を目指す。機械学習とSICM系の両面での環境整備は本年度で大方完了したため、データの取得・アルゴリズムの改良を中心として研究を推進予定である。 また、ナノピペットが試料表面に近づく際に生じるイオン電流値の変化(アプローチカーブ)の予想・分類を機械学習の対象とすることを計画中であり、教師データを半自動でラベル付けするためのプログラムを開発予定である。
|
Causes of Carryover |
COVID-19の世界的な流行に伴い、本年度は様々な学会・会議などの中止やオンライン化、県外への移動の規制などがあった。研究費の使用計画を立てていた段階では、パンデミックに対して楽観的に捉えており、旅費として600,000円を計上していたがその全てを本年度中に使用することが出来なかった。また、大学側のパンデミック対策として研究室内に同時に存在できる人間の最大数を規制され、テレワークが推奨されるなどによって、定期的に世話の必要な培養細胞を維持することが少なくなり、実験頻度が想定よりも低くなったた。そのため、高額な細胞関連の消耗品の使用量が想定より少なく、物品費も計画段階よりも大きな余剰が生じた。これらの余剰は次年度に使用予定であり、本年度に生じたCOVID-19の影響を鑑みて次年度の研究計画を立てる。
|