2022 Fiscal Year Annual Research Report
電気化学-減衰全反射型紫外分光法による有機半導体/イオン液体界面の電子状態研究
Project/Area Number |
20K15312
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
田邉 一郎 立教大学, 理学部, 准教授 (80709288)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ATR分光 / 紫外可視分光 / 界面分光 / 電気化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、研究代表者が開発した、電気化学環境下で測定可能な減衰全反射型紫外可視分光装置(EC-ATR-UV-Vis装置)をもちいて、デバイス動作中のイオン液体-電気二重層-有機電界効果トランジスタ(IL-EDL-OFET)の有機半導体/電極界面での電子状態を明らかにすることを目的とした。 ATRプリズム上に成膜した二分子層有機半導体膜に、ソースやドレインに相当する電極を蒸着し、絶縁層としてイオン液体を滴下し、さらにカウンターとリファレンスを入れることで、トランジスタを作製した。 作製したデバイスは、トランジスタ特性を示した。さらに、トランジスタとして動作中のATR-UV測定に成功した。まず、可視領域では、有機半導体由来の吸収が複数測定された。また、紫外域では、有機半導体に加えて、イオン液体由来の吸収が測定された。そして、電圧を印可することで、それぞれの吸収ピークの強度や波長が、変化した。具体的には、有機半導体由来の吸収は強度が減少するとともにブルーシフトし、イオン液体由来の吸収はスペクトル強度はそのままにレッドシフトした。特に後者のイオン液体由来の吸収の変化は、有機半導体界面近くのイオン液体を選択的に測定することのできる、本手法ならではの結果であると言える。なぜなら、ATR-UV-Visにおける測定空間は、ATRプリズム界面から十数ナノメートルに制限されているためである。 これらのスペクトルの起源や変化については、量子化学計算や分子動力学計算からも考察することが可能である。以上のようにして、トランジスタとして動作する有機半導体/イオン液体界面の分子論的描像を明らかにすることに成功した。
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