2021 Fiscal Year Research-status Report
多孔質材料を利用した効率的なレーザープラズマの生成と液体の高感度分析への応用
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20K15314
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
松本 歩 兵庫県立大学, 工学研究科, 助教 (30781322)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | レーザー誘起ブレークダウン分光法 / レーザーアブレーション / レーザープラズマ / 金属援用エッチング / 多孔質シリコン / 微量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
福島第一原子力発電所の廃炉現場における汚染水のその場分析技術として、レーザー誘起ブレークダウン分光法(LIBS)が期待されている。本研究課題では、金属援用エッチングにより作製した多孔質シリコン基板をLIBSに応用し、微量溶液の高感度分析技術の開発に取り組んでいる。 昨年度は、多孔質シリコンの孔深さによる信号強度の変化を調べるとともに、レーザー照射位置によるばらつきを評価した。本年度は、孔深さを最適化した多孔質シリコンを用いて、定量分析の精度を評価した。1~200 ppbのストロンチウムを含む試料溶液(7.0 μL)を多孔質シリコン基板上に滴下し、エネルギー2.5 mJ/pulseのレーザーを用いて蒸発乾固物のLIBS分析を行った。溶液中のストロンチウムの濃度に対して発光線の強度をプロットすると、決定係数0.998の直線的な検量線が得られた。このときのストロンチウムの検出下限は0.67 ppbであった。この結果は、液量や照射エネルギーが制限された条件下でも、希薄溶液中の微量元素を高感度かつ定量的に検出できることを示している。 また、平滑シリコンおよび多孔質シリコン上で生成するプラズマの発光スペクトルを測定し、ボルツマンプロット法によりプラズマ中のシリコン原子の励起温度を求めた。その結果、多孔質シリコンを用いると、スペクトル測定時のプラズマ温度が高くなることがわかった。多孔質シリコンによってLIBS信号が増大する要因のひとつとして、プラズマ温度の上昇が挙げられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、定量分析の精度を評価し、制限された条件下でも微量元素を高感度かつ定量的に検出できることがわかったため、順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、多孔質シリコン上で生成するプラズマの解析をさらに進める。プラズマの温度や密度、電離度に加えて、気体由来の元素の発光やプラズマの膨張過程、衝撃波にも着目し、多孔質シリコンの孔深さによるプラズマ特性の変化を調べる。また、対象元素とは無関係の塩を高濃度に含む試料の分析や、キャリブレーションフリー法による蒸発乾固物の組成分析を行い、その精度を評価する。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響により、学会がオンライン開催となったため。次年度、プラズマ解析のための光学部品や成果発表などのために使用する。
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Research Products
(14 results)