2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of an intelligent bio-Raman analysis approach
Project/Area Number |
20K15315
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
安田 充 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (20742307)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ラマン分光 / 多変量解析 / 光学干渉 / ラマン散乱光 / ラマン増強 / 薄膜干渉 / バイオラマン |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,非染色・非破壊で細胞内分子の分子構造情報をもたらすラマン分光法が,未知の生命現象の探索に適したアプローチとして注目を集めている。しかし,細胞にダメージを与えない低出力レーザーでデータ解析に必要なある程度のS/N比をもつラマンスペクトルを得るには,1ラマンスペクトルあたり少なくとも1秒以上のレーザー露光時間を要する。この長い露光時間が原因で,短い時間に起きる生命現象を時間分解して追跡できない問題があった。
そこで,本研究ではAg基板上に透明なAl2O3超薄膜を形成したナノ薄膜干渉基板に着目し,ナノ薄膜干渉基板がもたらすラマン増強効果を利用することで,様々な生命現象を時間分解して分子レベルで追跡できる新たな高速ラマンスペクトル測定法を開発するとともに,バイオラマン実験の律速となっていた膨大なラマンデータの解析時間を短縮できる高速ラマンデータ解析基盤を確立することを目標とした。
次年度は,初年度に行った反射率測定実験ならびに光学シミュレーションの結果から決定した最適なAl2O3膜厚をもつナノ薄膜干渉基板を用いて,ヒト培養細胞のラマンスペクトル測定を行った。ナノ薄膜干渉基板では一般的なガラス基板に比較して,高いラマンシグナルが得られた。一般に,自発ラマン分光法では,ラマンシグナルはレーザー露光時間に比例する。この関係性に基づくと,ラマンシグナルが増強するということは,ナノ薄膜干渉基板でのラマンシグナルがガラス基板と同程度になるまで,ナノ薄膜干渉基板ではレーザー露光時間を短縮できる,すなわち高速なラマンスペクトル測定が可能であることを意味する。したがって,高速ラマンスペクトル測定法の基盤を確立することができた。一方,ワークステーションを使った高速多変量解析プログラムについては現在,作成中である。
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