2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of Organized Molecular Assembly-Based Array Systems Toward On-site Proteomics
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20K15318
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
南木 創 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (40793980)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 分子集積体 / 分子認識 / トランジスタアレイ / 自己組織化単分子膜 / オンサイト分析 / 金属錯体型レセプタ / プロテオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,分子集積体を導入したトランジスタアレイの構築を通じて,生体分子の翻訳後修飾状態をオンサイトで分析するセンサ基盤技術の創出を目指す。令和2年度は以下の内容を検討した。
1)1分子で多彩な分子認識場を実現するユニット材料の設計・合成:固液界面に構築される分子認識場では,レセプタの集積状態が多点相互作用の発現や水素結合・静電相互作用の発現に大きく影響する。そこで,溶媒和によって集合状態が変調するN,N’-(etane-1,2-diyl)bis(4-benzamide) (NNEBA)を組み込んだチオール化合物を設計・合成した。当該分子の溶媒中挙動を光学的に調査したところ,水素結合阻害剤(各種低級アルコール)の添加によってさまざまな集合状態を取り得ることが確認された。そこで,各種阻害剤存在下にて当該分子の金薄膜上への修飾を試みた。その結果,阻害剤の添加条件の違いにより,金薄膜上においてそれぞれ集積状態の異なる単分子膜が形成されていることが,X線光電子分光の結果から示唆された。これにより,溶媒条件の調節によって単一分子から多彩な分子認識場をプログラムし得る材料の基本設計を見出した。
2)トランジスタアレイ上における多次元分子計測能の検証:NNEBAを組み込んだチオール化合物の末端に,翻訳後修飾の一種であるリン酸化を認識し得る亜鉛―ジピコリルアミン錯体(Zn(II)-dpa)を導入したレセプタ材料を合成した。金ゲート電極を有するトランジスタチップ上に,当該レセプタをそれぞれ任意の修飾条件にてアレイ状に導入し,縮合リン酸類の電気的検出を試みた。その結果,修飾条件(=レセプタ集積状態)の異なる各トランジスタにおいて,縮合リン酸類に対しそれぞれ交差的な電気信号の変化が観測された。これにより,設計したユニット材料の導入が,トランジスタの分子計測能を効果的に多様化できることを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに,集積アレイの構築に有効なレセプタ構造・ユニット骨格の選定と設計指針を確立し,年次目標としていたレセプタの調製・分子間相互作用の評価を達成した。また,誌上発表や学会発表を通じて関連した成果の一部について既に外部発信をしており,現在までにおおむね順調に研究を進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに見出したユニット材料設計とトランジスタアレイの分子計測能を基に,次年度は低分子,中分子(ペプチド),生体高分子(タンパク質)の各標的群に対する同時定性分析を試みる。はじめに,Zn(II)-dpa/NNEBA単分子膜を各種修飾条件によって導入したトランジスタアレイを用いて,様々なリン酸化合物に対する多変量応答性を確認する。得られた応答パターンを解析(例:主成分分析,線形判別分析等)することで,作製したトランジスタアレイが各化合物を正確に識別できることを検証する。さらに,リン酸化率が異なる各種ペプチド類について,検証したトランジスタアレイを用いてその識別が可能であることを確認する。これらの検証ステップを経て,必要に応じて修飾条件や錯体の金属中心を変更することで,リン酸化の定性・定量分析に有効な交差応答能の調節を図る。モデル低分子~ペプチドにより最適化されたトランジスタアレイを用いて,最終的に異種タンパク質のリン化の有無・量の識別を試みることで,当該手法のオンサイト・プロテオミクスにおける有効性を実証する。
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Causes of Carryover |
金電極上へのレセプタ材料の修飾・固定化について,当初計画ではインクジェット型塗布装置を用いて行うことを予定していた。2020年度中に該当装置が所属機関の共用設備として導入されたため,想定していた関連装置・消耗品類の購入が不要となった。このため,次年度に繰り越される使用額が生じた。次年度は,作製したセンサアレイデバイスの翻訳後修飾検出能を実際の生体分子を用いて評価する予定であり,繰越分の助成金はモデルペプチド・タンパク質等の高額試薬類の購入に充てる。研究開始時の想定よりも多種多様な標的分子の検出を試みることで,本研究にて構築されるトランジスタアレイの分析基盤としての有効性をより多角的な視点から検証する。
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Remarks |
受賞等:“小澤・吉川記念賞”(公益信託 小澤・吉川記念エレクトロニクス研究助成基金,2020年4月)
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