2020 Fiscal Year Research-status Report
Synthesis of functional bio-based polymer using furfural-derived multifunctional monomer
Project/Area Number |
20K15320
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
筒場 豊和 群馬大学, 大学院理工学府, 研究員 (70807396)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 多官能性モノマー / バイオベースポリマー / 開環重合 / ラジカル重合 / 高分子反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
石油化学製品による環境破壊や石油資源の枯渇など、高分子材料が関係する分野で多くの問題が提起され、その代替材料として、再生可能な植物由来資源であるバイオマスからなるバイオベースポリマーが注目を集めている。しかしながら、バイオベース化合物の構造は石油資源由来のものと比べてその種類が絶対的に少ないため、従来の合成ポリマーのような構造の多様性を持たせるのは困難であった。こうした課題に対し、一つのモノマーから数種の重合反応が可能な多官能性モノマーの利用は画期的な解決手段である。 そこで本研究課題では非可食性バイオマス由来であるフルフラールを原料として用い、2種類の重合が可能な新規多官能性モノマーの開発と、これを用いた機能性バイオベースポリマーの合成を考案した。この多官能性モノマーはビニル基と六環ラクトンが一分子内に集約された構造を有しており、ビニル重合と開環重合により全く異なる性質のビニルポリマーとポリエステルをそれぞれ合成することができる。またここで得られるポリマーは、高分子反応により異なる構造・機能を付与することができ、一つのバイオベースポリマーによる用途に応じた様々な性質の高分子材料の創製が期待できる。 本年度は、フルフラールの還元によって得られるフルフリルアルコールのAchmatowicz転位と、Ir触媒存在下の異性下反応、続く2級水酸基への置換基の導入により、多官能性モノマーを合成した。また、この多官能性モノマーをラジカル重合、及びアニオン開環重合に適用した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は以下の理由により研究が概ね順調に進行していると判断している。 ①フルフリルアルコールを出発物質とした多官能性モノマーであるアルケニル基含有六員環ラクトンの合成法を確立したこと。また、反応の最適化によりグラムスケールの合成が可能になったこと。 ②多官能性モノマーのラジカル重合及びアニオン開環重合を実施し、各重合におけるその低い反応性を明らかにしたこと。 ③DFT計算により多官能性モノマーの反応性を特徴づけたこと。類似の構造を持つバレロラクトンとの比較により、モノマーのα,β不飽和カルボニル構造が重合性の低下の原因であると推定したこと。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は多官能性モノマーを用いた各種重合を達成するために、開環重合では以下の実験を行う。①高活性な触媒の使用。ブチロラクトンのような低反応性のラクトンを重合可能な触媒を用いる。②ビニル基の除去。接触還元等の反応で重合を妨げるビニル基をアルキル基に変換し、代わりの反応性官能基を導入する。 また、ビニル重合では以下の実験を行う。①他ビニルモノマーとのラジカル共重合。マレイン酸やスチレン、メタクリレートモノマーとのラジカル共重合により多官能性モノマーをシークエンスに含むポリマーが得られるか検討する。②別の重合活性種の適用。ビニルモノマーを重合可能な遷移金属触媒を用いる。 これらの方策によりポリマーが得られた場合は、計画に示した高分子反応を実施する。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍に伴う業務の在宅化や時間制限のため、科研費の研究の時間を予定通り確保することができなかった。実験に大きな遅れは無いが、当初予定していた高分子反応の基礎実験まで実験が及ばなかったため、次年度使用額が生じた。次年度では重合検討に加えて高分子反応に注力し、そのための試薬や反応性ポリマーの大量合成に経費を使用する予定である。
|