2020 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of rheological control method of transient network by topology control and development of novel ophthalmic viscosurgical device
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20K15338
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
片島 拓弥 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任助教 (20759188)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | レオロジー / 一時網目 / 粘弾性 / 動的共有結合 / 白内障 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請では網目トポロジーとレオロジー特性の相関を調べ、一時網目のレオロジー特性の学理を解明し、得られた指導原理に基づき、新規眼内手術補助剤のプロトタイプを開発することを目的とする。 材料のレオロジー制御は、医療現場で重要であったが、従来材料ではニーズに合う物性を到達しえず、根本改善が必要であった。 申請者は最近、会合点に寿命のある一時網目のトポロジーを変えることで、レオロジー特性を制御できる可能性を発見した。そこでトポロジーの異なる一時網目を作り分け、その学理を解明し、新規レオロジー制御材の開発をする。 初年度である本年は、(1) トポロジー制御された一時網目の精密な作り分け(2) 線形・非線形粘弾性を含めた物性測定を行った。種々の分岐数を有するポリエチレングリコール (PEG) を 主鎖にもち、末端をにボロン酸とジオールに修飾した 2 種類の前駆体を合成をした。これらから、モデル一時網目となるPEG slimeの合成に成功した。高分子濃度、分子量、 混合比率、前駆体分岐数をパラメータとして、系統的に制御した一時網目の作製に成功した。得られた試料について(a) 線形粘弾性応答の評価、(b) 定常流動測定による非線形粘弾性応答の評価、(c)生体内での安全性の指標となる浸透圧の評価を行った。 (a) PEG slimeの粘弾性緩和強度は濃度のみにより、従来型のネットワーク理論との乖離を示した。(b)定常流動測定では、強いストレスオーバーシュートを示し、そのひずみは絡み合い高分子溶液のそれと類似の値を示すことを明らかにした。(c) slimeの浸透圧は同一組成のゲルの浸透圧と等しいことを世界で初めて発見した。 今後は、PEG slimeの末端反応速度論に着目し、粘弾性の分子論に迫るともに、眼科補助剤として必要なレオロジー特性の絞り込み、新規眼内手術補助剤の設計指針を提示することを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4-6月は新型コロナウイルス感染症の蔓延により実験が停滞したが、当初の予定通り、PEG slimeの作り分け、およびその線形・非線形粘弾性、浸透圧の網羅的な評価が完了した。さらにこれらのデータをもとに、PEG slimeの物質特許の出願、および関連原著論文を4報提出できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目は、基礎的な物性とトポロジー構造の関係について網羅的な解析および、特許出願を行った。2年目はこれらのマクロな物性とミクロな分子ダイナミクスを比較し、その分子論的な理解を進める。そのために、ボロン酸とジオールの会合・脱離定数評価を行う予定であり、すでにプレリミナリーな実験を始めている。また、一時網目の浸透圧が高分子ゲルの浸透圧とよく一致するという結果は、世界のどのグループも論文として報告していないため、その普遍性を精査したうえで、論文化を進めていく必要がある。 また、既存の眼科手術補助剤のレオロジー特性を評価することで、眼科医の感覚にマッチしたレオロジー特性の絞り込みを行う。これらの結果をもとに、新規眼科手術補助剤の設計指針を固める予定である。
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Research Products
(9 results)