2020 Fiscal Year Research-status Report
サーモトロピックな高密度グラフト高分子を用いた配向網目ハイドロゲルの創製
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20K15341
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小野田 実真 名古屋大学, 工学研究科, 学振特別研究員(CPD) (00801119)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高分子ゲル / 高分子エラストマー / ボトルブラシポリマー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ボトルブラシポリマーと呼ばれる高密度グラフト高分子を用い、配向網目を有する新規な高分子ゲル・ソフトマテリアルの創製を目指している。しかし、ボトルブラシポリマー自体の材料学的新規性により、本研究には大きく次の課題がある。1.合成手法の確立、2.配向手法の確立、3.配向物性評価手法の確立。そこで、採用初年度には合成手法の確立を目指した。結論として、grafting-fromメソッドの採用により、目的の高分子側鎖を有する異方的なボトルブラシポリマーの合成に成功した。 また、合成手法の確立過程で得られた知見をもとに、「ゲル化速度が通常の系の100倍、力学強度が15倍」という性質を有するボトルブラシポリマーゲルの創製に成功し、本系は論文受理済みである。具体的には、側鎖末端でヒドラゾン架橋が可能なポリエチレングリコールベースのボトルブラシポリマーを合成し、ゲル化特性を詳細に調査した。側鎖が無数に存在することによるmultivalency effectにより、ゲル化速度は4分岐高分子と比べ最大で100倍にまで達した。さらに、側鎖間で排除体積効果が強く働く結果、本ゲルは殆ど膨潤しない性質を示した。本特徴はしばしばゲル化時間や膨潤圧が問題となるインジェクタブルゲルへの応用が強く期待される。また、迅速なゲル化時間と優れた力学強度は、3Dプリンタブルなゲル材料への展開も強く期待される。 更に、ボトルブラシポリマーを超分子架橋剤として用いることで新規なエラストマーの創製にも成功した。ボトルブラシポリマーは分岐数の精密制御が可能なことから、理論的なアプローチで得られた物性を評価できる点で魅力的である。現在は本系についても詳細な検討を推進している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、求められる知見の特性上、米国・マサチューセッツ工科大学にて実施している。コロナ禍における研究活動制限が厳しく、研究室における実験稼働時間は通常時の30%程度となることを余儀なくされた。しかし、基本的な合成手法の確立、関連するボトルブラシポリマーゲルの創製及び論文受理、ボトルブラシエラストマーの合成及び特異的な集合挙動の発見など、多くの成果が得られている。以上より、研究はおおむね順調に進展していると結論付ける。
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Strategy for Future Research Activity |
一年目に得られた知見をもとに、異方性・刺激応答性ボトルブラシポリマーに架橋性官能基を導入し、異方性ゲルの合成を目指す。最も大きな課題は、いかにして長距離周期性のある異方網目を実現するかという点である。ボトルブラシポリマーはナノロッド形状をとるが、剛直性高分子と比べると柔らかくしなる性質があり、特に高濃度条件では巨視的には乱雑な集合状態を取ることが報告されている。長距離周期性の実現には、材料調製時に1軸刺激を印加することが現状の分子設計では必須である。そこで、目的の高分子には光架橋性を付与し、フロー中の架橋により一軸配向を固定化する手法を検討している。また、主鎖重合度・側鎖重合度・側鎖官能基密度等も重要なファクターとなるため、これら条件をパラメータに目的の物性を有する高分子ゲルの創製を目指す。 また、一年目に得られた知見から、ボトルブラシエラストマーの検討を進めている。系のmultivalencyをコントロールすることで超分子相互作用の速度論をチューニングし、高分子ネットワーク材料の物性コントロールに必要な基礎的知見の確立を目指す。
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