2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K15350
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
佐野 航季 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (20845763)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 無機ナノシート / 磁性材料 / 磁気斥力 / 磁場配向 / ソフトマテリアル |
Outline of Annual Research Achievements |
我々の身の回りで日常的に使われる有機材料や複合材料の設計戦略は概して「引力的相互作用」に基づいている。例えば、分子や高分子間の化学結合や構成要素間に働く引力的相互作用を適切にデザインすることによって、様々な機能や優れた力学物性を有する材料が作製されている。一方、これと対をなす概念は「斥力的相互作用」であるが、特に「静電斥力」と「磁気斥力」はその合理的設計と制御の難しさから、長年、材料科学分野で戦略的に利用されてこなかった。本研究では「磁気斥力」の概念をソフトマテリアルの材料設計に導入し、高強度化・高機能化された革新的材料の創成を目指す。 本年度は主に、「磁気斥力」を生み出すためのビルディングブロックとなる磁性ナノシートの作製とその磁場応答挙動の理解を行なった。磁性ナノシートの作製に関しては、それ自身が磁性を有する無機ナノシートを得ることに成功した。また、磁性ナノ粒子を非磁性ナノシート表面に修飾するというボトムアップ的手法を利用することによって、ハイブリッド磁性ナノシートの作製にも成功している。これらの手法で得られた磁性ナノシートはどちらの場合も水中で安定に分散し、一定以上の濃度でリオトロピック液晶性を発現することを偏光顕微鏡観察によって確認した。また、非磁性(反磁性)ナノシートの場合、ナノシートの配向制御には数テスラ程度の強磁場印加が必要であるが、今回得られた磁性ナノシートは1テスラ以下のハンドマグネットによって比較的簡便に配向制御可能なことも明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は主に、磁気斥力を生み出すためのビルディングブロックとなる磁性ナノシートの作製とその磁場応答挙動の理解を行なった。これは当初の計画通りであり、磁気斥力をソフトマテリアルに導入するための準備も整っていることから、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、ボトムアップ戦略・トップダウン戦略を利用することで、磁性ナノシートの精緻な集合構造・配向構造を実現し、磁気斥力をソフトマテリアルに導入する。特に、本年度の成果によって、ハンドマグネットでの配向制御が可能なことが分かったため、磁場配向を駆使したトップダウン戦略による精密配向制御を重点的に行う。得られたソフトマテリアルの内部構造は電子顕微鏡や小角X線散乱測定によって解析するとともに、マクロな力学物性は圧縮・引張試験や粘弾性測定によって評価する予定である。
|
Causes of Carryover |
コロナウイルスの影響による実験等の制限によって、物品購入額が当初の予定より少額となった。この差額は、次年度の物品購入費用に充てる予定である。
|
Research Products
(4 results)