2020 Fiscal Year Research-status Report
高仕事関数を有する高分子電極によるオーミック接合の実現と高効率光電変換素子の開発
Project/Area Number |
20K15358
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
山下 侑 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, NIMSポスドク研究員 (80847773)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高分子半導体 / 化学ドーピング / 仕事関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
高分子半導体薄膜に対して酸化還元能を有するドーパントを作用する化学ドーピング処理によって高電気伝導度・高仕事関数が得られることがこれまでに分かっていた。これらの特徴は様々な光電変換素子や電子デバイスへの応用に有望な特徴である。こうした優れた電子機能性の実現には、高分子半導体薄膜の結晶性ラメラ構造を保持したままにドーパントの格納が生じることが重要であった。こうした中、これまでは高分子半導体とドーパントが形成する構造の詳細は不明瞭であり、重要な課題となっていた。本研究では、X線回折測定とそのシミュレーションを用いることで超分子共結晶構造が形成されていることを明らかにし、学術論文として報告した。これによってドーピングされた高分子半導体における高伝導度や高仕事関数実現のメカニズムの解明につながると期待される。 ドープされた高分子半導体の電子状態や物理化学的特性は、結晶性構造中に格納されるドーパント分子種によっても変調されると考えられる。高分子半導体の結晶性構造における空隙にドーパントを格納する場合には、ドーパント分子サイズに制約が生じるために、系統的な評価を行う上で障壁となる可能性があった。本研究では結晶性構造の空隙に着目し、汎用に用いられてきた高分子半導体には格納が不可能であるほど嵩高いドーパントの活用を検討した。すると、空隙サイズの大きな高分子半導体では結晶性構造を崩すことなく四つのフェニル基を有するかさ高いドーパントイオンを格納することに成功した。この嵩高いドーパントイオンは水分子など極性分子との相互作用が弱くなることが予想され、実際、大気中の水分子に由来する劣化を抑制した。ドープされた高分子半導体の仕事関数は5.7 eVに達している。以上のように高分子半導体の結晶構造中におけるドーパントイオンの配列やその分子種に依存した薄膜の電子状態、物理化学的特性への影響を解明しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
高仕事関数を有する高分子半導体薄膜における半導体ードーパントの超分子共結晶構造が明らかとなった。さらに、従来は格納困難であった嵩高いドーパント分子を結晶構造中に大きな空隙を有する高分子半導体に対し用いたところ、従来より高い5.7 eVの仕事関数が実現された。当初予定していた高仕事関数を有する高分子半導体だけでなく、n型注入層として有望な低仕事関数を有する高分子半導体の検討も進展している。 さらに、これらの高分子薄膜をデバイス実装するための技術開発も進展中である。
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Strategy for Future Research Activity |
目標として掲げた5.8 eVの仕事関数に迫る5.7 eVの値までを実証しており、嵩高いドーパントイオンが高密度で導入された系について今後も検討を行うことが有望であると考えられる。 また、今年度には高仕事関数を有する高分子半導体薄膜を光電変換デバイスや電子デバイスにおいて活用する手法を確立し、電気的な測定から仕事関数制御の効果を検証することも重要な課題である。このために現在、化学ドーピングが施された高分子半導体薄膜を積層するプロセスを確立しつつある。本プロセスの確立を早期に完了することで種々のデバイスにおける活用を推進することを目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、物品の発注・活用について一部で当初計画より遅れが生じていた。計画を完遂するために今年度に昨年度から繰り越した予算も用いて研究を遂行する。
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Research Products
(7 results)