2020 Fiscal Year Research-status Report
Study of charging process at positive electrode in rechargeable lithium-air battery
Project/Area Number |
20K15370
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
松田 翔一 国立研究開発法人物質・材料研究機構, エネルギー・環境材料研究拠点, 主任研究員 (30759717)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リチウム空気電池 / 酸素発生反応 / レドックスメディエーター / 硝酸イオン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、リチウム空気電池環境下での硝酸イオンレッドクスの電気化学反応挙動を明らかにすることである。硝酸イオンがリチウム空気電池系において、電池特性を決定する多様な役割を果たしているにもかかわらず、その反応機構は非常に複雑であり、分子レベルでの機構解明には至っていない。本研究では、硝酸イオンをモデルケースとして、その多様や電気化学反応挙動を体系的に理解し、レドックスメディエーターに求められる必要因子を明確にすることを通じて、リチウム空気電池の実用化に不可欠な、可逆的な電気化学反応を可能とする電解液設計に関する知見の獲得を目指す。2020年度は、正極反応における硝酸イオンが関与する電気化学反応の同定に着目し、可逆的な充放電反応を実現するための、カギとなる化学種の同定、その役割の解明を目的として研究を進めた。特に、電気化学分析と反応生成物解析(ガス分析、電解液分析、電極分析)を組み合わせることで、硝酸イオンが関与した系内の電気化学反応の物質収支の把握を試みた。その結果、硝酸イオンの役割として、レドックスメディエーターとして機能し、酸素発生効率の向上に寄与するという効果に加えて、副反応である水の発生を促進するという機能があることを明らかにした。独自に開発したoperand分析装置を利用することで、硝酸イオンが系内の副反応経路に影響を与えていることを示唆する結果を得た。特に、同位体を用いた実験により、溶媒分解反応を促進していることを示す結果が得られている。以上の結果は、硝酸イオンの新しい反応機構の存在を示唆するものであり、電解液設計の観点から重要性の高い知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度においては、以下2つの成果が得られており、研究は順調に進捗しているといえる。 ①リン酸エステルと硝酸イオンで構成される電解液系において、リチウム空気電池の充電時の酸素発生効率が理論値で進行し、硝酸イオンが存在することに加えて、溶媒和構造が酸素発生効率に影響を与えることを確認した。 ②各種分析手法を組み合わせることで、リチウム空気電池セル内部の物質収支を正確に把握することが可能な網羅的解析システムを構築し、硝酸イオンの関与を評価する準備が完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
【今後の研究の推進方策】 2021年度は、正極・負極間のクロスオーバー機構に着目し、研究を進める。実際の電池系においては、正極・負極間の距離が数十マイクロメートルと非常に近接しているため、正極・負極で発生した化学種のクロスオーバーの効果を無視することはできない。2020年度で明らかにした、正極、負極におけるそれぞれの電気化学反応の挙動が、正極・負極間のクロスオーバーが存在する条件で、どのように影響を受けるかを定量的に検証する。
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