2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of luminescence indicator of transcript abundance using RNA recognition module
Project/Area Number |
20K15395
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河村 玄気 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (10852791)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 発光 / ルシフェラーゼ / 転写量 / スプライシング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、RNA認識モジュールおよび発光タンパク質の組み合わせを利用することにより、任意の転写物を発光によって検出するプローブの開発を行う。このプローブには任意のRNAを認識し、RNAの認識を発光シグナルに変換する性質が求められる。そこで、構造変化に伴う発光タンパク質ルシフェラーゼの発光能変化を利用する。RNA認識モジュールとルシフェラーゼを融合することで、RNA認識モジュールが転写物と結合した結果生じる構造変化により発光能が変化するプローブを設計・構築する。 現在までに、RNA認識モジュールが標的とする転写物を認識すること、またその認識能は特異的であることを確認している。また、補因子となる標的RNAを変更することで複数種類の異なる標的RNAに選択的に結合可能であることが明らかとなった。実際にこのプローブを生細胞に発現させたところ、発光が確認された。一方、プローブのRNA量に対する応答性には課題を残しており、具体的にはRNA量に応答する発光量変化が数倍以上となるプローブを構築することが目標となる。 一方、応用先として計画している時計タンパク質のスプライシング産物特異的な測定に関しては準備が着実に進んでいる。スプライシング産物量比の変化に関わる機構が未解明であるため、スプラシング産物量に対する応答の評価が難しい。そこで、人為的にスプライシング量比を制御する手段を構築し、生化学実験によりスプライシング量の制御を確認した。性能向上した発光プローブが完成した暁には、スプライシング産物量に摂動を加える前後での発光値変化を分析することで、発光プローブがスプライシング産物量選択的に発光を示すかどうかを検証することが可能となる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までに構築したRNA認識モジュールと発光タンパク質ルシフェラーゼを用いて融合したプローブが任意の標的転写物を認識できることを確認している。また、タンパク質構造予測によって候補としたRNA認識モジュールに存在するループ位置二か所それぞれに対し挿入位置を変更したプローブ群を構築したが、この改良では発光能の改善は見られなかった。そこで、構造予測に基づく新たな挿入位置の検討、および、挿入位置周辺のアミノ酸残基に対して変異を加えることでプローブ構造の最適化を図った。結果、プローブ由来の発光は見られたものの、統計的に有意な転写物量依存的な発光変化は見られなかった。一方で、構築したプローブ候補の中には発光量が恒常的に高いものと、低いものが存在すること分かった。このうち低いものに関しては構造的に発光能が抑えられている状態にあることを示しているため、これらを基にさらなるプローブ性能の向上を目指すことにした。 また、応用面に関しては、異なるスプライシング産物の存在量を検出することを目的として、スプライシング産物量を制御するプローブの構築を行った。制御対象となるRNAとしては最終的な応用を考えている時計タンパク質を選択した。このプローブではスプライシングアクセプター位置選択的にRNA結合タンパク質を結合させることで特定のスプライシング産物の生成を抑制する。定量PCR法によりスプライシング産物量比を見積もったところ、このプローブによりスプライシング産物量比を数倍程度変化させることが可能であることが分かった。この手法を利用することで、生細胞におけるスプライシング産物量に摂動を加えることができる。そこで、このプローブを利用してスプラシング産物量比を摂動し、その前後での発光量を比較することで開発する発光レポーターがスプライシング産物量に追従して発光量変化することを検証することが可能となる。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在までに、RNA認識モジュールが標的とする転写物を認識すること、またその認識能は特異的であることを確認している。一方で、発光プローブの目標とする転写物量に比例した発光値変化は得られていない。そこで今後は, 開発した系の性能向上を引き続き図るとともに、概日時計系に対する応用を試みる。まず、目先の課題となる発光プローブの性能向上に最優先で取り組む。現在までに得られているプローブ候補の最適化を行うことで、発光プローブの性能改善を図ることができると考えられる。そこで、候補としているRNA認識モジュールを挿入するタンパク質残基周辺の立体構造が重要であると考え、周辺残基にランダム変異を導入することにより発光プローブの最適化を図る。 また、改良後の発光プローブを用いて概日時計系を対象とした転写制御の解析を行う。概日時計系は時計遺伝子と呼ばれる一群の遺伝子の転写制御により機能維持がなされている。そこで開発する発光プローブの特性を活かして時計遺伝子のスプライシング産物の日周的な変動について測定を試みる。まず、構築した発光プローブのスプライシング産物識別能を、開発したスプライシング産物制御プローブによる摂動法を組み合わせることで検証する。スプライシング産物制御プローブでは、スプラシング産物量比を数倍程度制御できることを確認している。そこで、摂動前後での発光プローブの発光量変化を測定し、摂動に対応する発光値変化を解析することで、発光プローブの性能を見積もる。以上の結果により、スプライシング産物に対応する発光値変化が得られた場合、発光値プローブを導入した細胞を用いて数日に渡る長期発光値測定を行う。発光値変化の解析を行うことで、時計遺伝子のスプライシング産物の日周的な変動が存在するかどうかの検証を行う。
|
Causes of Carryover |
本研究では、消耗品として主に遺伝子工学的手法によるプローブ構築、および、プローブの細胞実験に関わる経費を計上している。このうち、細胞実験に関わる実験に関して特に費用のかかる試薬等の使用を検討していたが、昨年度の研究では主に遺伝子工学的手法によるプローブ構築の段階に留まったため細胞実験関係の消耗品に関わる費用は当初の予定よりも少なくなった。また、新型コロナウイル対策による学会の中止や一部研究活動への支障があったため、計上した予算通りには研究計画が進められなかった。今年度の研究では細胞実験を主に行い、さらに生化学的実験による検証実験も計画しているため、主にこれらの実験のための消耗品類に次年度使用額を当てたいと考えている。
|