2020 Fiscal Year Research-status Report
Supramolecular chemistry in the prebiotic environment
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20K15400
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
窪田 亮 京都大学, 工学研究科, 助教 (00753146)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自己集合 / コアセルベート / 相分離 / ペプチド / 非平衡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本若手研究の目的は、「アミノ酸・ジペプチドから形成するコアセルベートを用いて前生命環境にとって必須な超分子化学反応システムを構築する」ことである。生命発生における化学進化過程の解明は、生命のルーツを知る上で重要な研究課題である。しかし、これまでにRNA・DNA・タンパク質等の生体高分子の合成過程については未解明であった。本若手研究では、申請者独自に発見した自己集合性ジペプチドからなるアシル転移触媒型コアセルベートを合成場とすることでペプチド・RNA重合反応を達成すること、および非平衡散逸系超分子化学を組み合わせることで、これまで未踏であったコアセルベートの自己増殖・分裂システムの開発に挑戦することを目的とした。 2020年度は主に自己集合性ペプチドの構造相関および小分子型コアセルベート内での反応性を評価した。また形成したコアセルベートが、その性質に依存した分子濃縮能を示すことを発見した。さらにこの濃縮能を生かすことで、縮合反応や重合反応を加速できることを予備的に発見した。 またコアセルベート実験とは独立に、自己集合性フェニルアラニントリペプチドからなる超分子ファイバーの進行波発生に成功した(Nature Communication 2020)。超分子ファイバーの形成と分解を二種類の異なる刺激の濃度勾配下で制御することで、超分子ファイバーの形成と分解が空間的に伝搬した進行波を発生することを見出した。この発生メカニズムは、数値計算・数値シミュレーションからも支持された。この知見はコアセルベート形成に関しても応用することができると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は主に自己集合性ペプチドの構造相関および小分子型コアセルベート内での反応性を評価した。ペプチドN末端に対して、様々な機能性分子を付与したジペプチドを有機合成したのち、緩衝水溶液中における自己集合能について評価した。その結果、多様な機能性分子を持つジペプチドがコアセルベートを形成することを見出し、独自のジペプチド骨格がコアセルベート形成のための良いモチーフであることを示した。また形成したコアセルベートが、その性質に依存した分子濃縮能を示すことを発見した。さらにこの濃縮能を生かすことで、縮合反応や重合反応を加速できることを予備的に発見した。これらの成果は、当初の予定通りの進行状況となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度では、前年度に発見したコアセルベート内部での反応をより詳細に検討する。具体的には、様々な反応およびコアセルベートの基質濃縮能に応じた反応性の制御を行う。またコアセルベート分裂に向けた刺激応答性コアセルベートの開発を行う。分子設計には、研究代表者がこれまでに行ってきた刺激応答性超分子ヒドロゲルの分子設計を参考とする。さらに「現在までの進捗状況」で述べた進行波といった非平衡な反応と組み合わせることで、分裂・増殖にまで展開する。
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Causes of Carryover |
2020年度は、主に有機合成実験を行ったのみであり、予想よりも物品費使用が少なくなった。またCOVID-19により海外・国内学会参加がキャンセルとなったため、旅費が大幅に削減された。これらの費用が削減されたため次年度使用額が生じた。2021年度は、有機合成費用・ガラス器具購入・光反応そ装置・反応解析のためのHPLCカラム購入などに物品費を割り当てる予定である。
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