2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K15440
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
鈴木 祥太 立教大学, 理学部, 助教 (00792714)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ファージ / SPβ / 部位特異的組換え / 相同組換え / 枯草菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
溶原性ファージは宿主細菌へ感染すると自らのゲノムを細胞内へ注入し、細菌ゲノムの内部へ組み込まれるタイプのウィルスである。この組み込み機構は一般的にファージにコードされる部位特異的組換え酵素(Int)によるファージゲノムと宿主ゲノムの標的部位attPとattBの組換えにより行われる。これまでの研究により、枯草菌の溶原性ファージSPβがattB欠損変異体を宿主として感染させた場合そしてSPβのInt欠損変異体(SPβΔInt)を宿主に感染させた場合に相同組換えによって溶原化を確立できることが示され、宿主枯草菌の相同組換え因子RecA欠損変異体でも同様の現象がみられることからファージに由来する機構であることが示唆された。本年度はSPβに多く残されている機能未知遺伝子の中でゲノム解析によりIntと推察される遺伝子2種、およびλRed組換えと類似の機構であることを考えてDNAヌクレアーゼ(Exo)とみられる遺伝子3種を対象に遺伝子欠損変異体を作製し、相同組換え機構への影響を調べた。これらの欠損変異体についてファージ誘発実験によりファージ形成率を調べたところ、yomM (Int)とyokF (Exo)は親型ファージ(SPβΔInt)と同等の形成率を示したが、yorK (Exo)は約1/100倍に低下、yopP (Int)とyomG (Exo)ではファージの形成がみられなくなった。ファージ形成がみられた yomM、yokFおよびyorK欠損変異体ファージについて宿主枯草菌ゲノムへの組み込みを調べたところ、それぞれ親型ファージと同程度の頻度で相同組換えによる組み込みがみられた。以上より、ゲノム解析で予測されているSPβの機能未知遺伝子のうち Int および Exo とされる遺伝子は宿主ゲノムへの相同組換えに関与しないことが示された。一方、解析された機能未知遺伝子のうちyopPおよびyomGがSPβのファージ形成に必須な因子であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に引き続きSPβファージの相同組換えによる組み込み機構に着目し、R3年度は相同組換えに関わる因子の同定が進められた。当初より計画していた相同組換え因子の可能性がある候補遺伝子の欠損変異体は作製され、変異体ファージの取得と相同組換えによる組み込み頻度が明らかにされた。今回得られた知見は、相同組換えに関わる因子の同定までは至らなかったが、予想されたインテグラーゼおよびDNAヌクレアーゼ遺伝子ではなくその他の機能未知遺伝子に因子が存在する可能性が示された。一方、解析対象の遺伝子にSPβのファージ形成に必須な因子を見出し新たな知見を得ることができた。またR3年度中に行ったバイオインフォマティクス的な解析により、相同組換えに使われる相同領域が枯草菌の近縁種間のみならず枯草菌ファージ間にも保存されていることが見出されており、これらの相同領域を保有することに重要な意義がある可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
SPβファージの宿主枯草菌に対する相同組換えに使われる相同領域には、DNA損傷を乗り越えて複製を行うY-family DNA polymeraseやDNase活性を有するToxin遺伝子がコードされている。また、これらの相同領域はSPβ以外の枯草菌ファージにも保存されていることがバイオインフォマティクス的な解析により示されている。今後は相同組換えに関与する因子の同定解析を継続するとともに、SPβの相同組換えに利用される相同領域の遺伝子についての解析を行い、相同組換え機構および相同領域が保持される生物学的意義について検討する。
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Causes of Carryover |
R3年度に予定していた出張(学会出席)がオンライン開催になったこと、タンパク質解析に関する精製および検出に関わる物品の購入を次年度に見送ったため。前年度の未使用分は、本研究成果を論文出版や学会で発表する為の経費として、またR4年度のタンパク質解析に関する物品に使用する。
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